過去拍手文
□明日はきっと晴れになる
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どうかしていた、と思う。
きっかけは本当に些細なことで。
『バカ野郎!』
ムタの叱責で自分が何をしたのか分かった。それくらい自分は疲れていたのだと言ってしまえばそれは言い訳にすらならなくて。
「ハル!どこだっ!?」
ドールタウンの中にいるであろうハルに呼びかけては返ってこない返事に苛つきを覚え、そんな自分に心の中で舌打ちした。
***
きっかけは本当に些細なこと。
出かけるときに靴下が見つからなかった。それだけだったのだ。
しかし、最近立て続けに起こる怪事件や依頼の急増のせいで寝不足だった自分は怒りの沸点が低かった。
「何で無いんだ!」
いつも衣類を入れている引き出しを力任せに閉め、私室から事務所に降りていく。
その途中でハルに会った。
「あ、出かけるの?」
その質問にああ、と短く答えて出かけたいんだがな、と辺りを見回す。
「何故かこの服用の靴下が見つからなくて…引き出しにしまってあったはずなんだが。」
「あ、それならね。」そういってハルは階段を駆け降りてすぐに探し物を抱えて戻ってきた。
「はい、どうぞ。洗濯物に出されていたから洗っておいたよ。」
「何故、ハルが私の衣類を洗っている…?」
――今思えば本当に下らない。
「え?」
何を言われたのか分からない様子で洗濯物を持ったままハルが首を傾げた。
「何故、勝手に私のものを弄る!?君は此処(ドールタウン)の人形にでもなったつもりか!?」
私が怒鳴りつけた声にソファーで新聞を読んでいたムタがいぶかしげな視線を向けた。
「オイ、男爵…「うるさい!」」
柄にもなく、怒鳴り付けて。
傷ついたような眼差しのハルに、
「君は…外の人間だ。勝手なことはしないでくれ。」
――とどめをさした。