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□別れはいつも、突然に。〜アキside〜
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I can't understand my heart.
―私は私の想いを理解出来ない。
「どういうことだい?」目の前の猫人形のバロンさんではなく、上にいたトトさんって名前の鳥さんが私に問いかけた。
「…おかしいって思うかもしれないけど、私には死んだ人の魂のようなものが見えます」お母さんもそこに、と扉を見た先の母はニッコリと微笑む。
「ハルが…?」戸惑ったような声に私はバロンさんを振り向く。
信じてくれるかな?と小さく希望観測を立てて説明を始める。
むしろ、自分は心を持った物であり、者であるバロンさん達こそ、私たちがいた世界からすれば不思議な存在なのだから、お互い様とも思うし、信じて欲しい。
「…私には小さい頃から場所に関係無くそういうものが見えてて…普通の人には思いの強いところとか、心霊スポットみたいなところなら見えるみたいです」
その話が真実なのか吟味するような
視線が扉に向き、ちら、と私を見た。
そのわずかな視線さえも、痛い。
そういうものなのだ。人間は自分の目で見えないものは信じない。
…彼らが人間、と言えるのかはまた疑問を持つところだけれど。
「見えないですよね…」
上から扉を凝視しているトトさんを見てふ、と息をつく。
私のこの能力を信じてくれる人はあまりにも少ない。
諦めに似た感情が私の意識を支配しようとし、項垂れたときバロンさんが凛とした声で、言った。
「見えない…だが君の言うことは信じたい。」
その言葉にまず耳を疑って、顔をあげると真剣な顔で私を見るバロンさんがいて。
その瞳には侮蔑も、嘲笑の色も無かった。
純粋に私の言葉を事実として受け止めてくれている。そんな目に嬉しくなって私は無意識に顔を綻ばせる。
「信じてくれますか?」
「信じるよ。」大真面目に頷いたバロンさんに良かったぁ〜と思わず安堵の言葉が漏れた。
さて、信じてもらえたなら次はっ!
「それで、あの、一緒に私たちの世界に来て欲しいんです。」
勢い余って省略化し過ぎた私の依頼にバロンさんが
頭に?マークを浮かべた。
私は慌てて捲し立てる。
「あのっ、えっとですねっ!つまり私たちのいる世界に来てもらって!ええと…」
私のあまりの慌てように可笑しさを覚えたのかクスクスと笑うバロンさん。
上にいるトトさんも翼に嘴を隠して肩を震わせていた。
あぅ〜〜…恥ずかしいよ…。
口をパクパクさせ、真っ赤になった私に助け船を出すかのようにバロンさんが続ける。
「つまり、個人的な願いではあるけれど、アキ…君は困っているということだね?」
そうです!と頷くと依頼を了承するように僅かにバロンさんも頷いた。
「…お母さんはこの世に何か、未練があるみたいでずっとあの家にいるんです。だからその未練が何なのか、突き止めたくて。それが依頼です。」此処で見えないならあとは向こうの世界しか…と呟いて俯く。
本当は分かっている。
お母さんが何を考えて私を此処に連れてきたのか。目的も、この先どうなるのかも。
俯いた視界で、世界が僅かに滲んだ。
その涙を止めるためにきつく、唇を噛む。
泣くのは駄目だ、と堪えた。
今は泣く時ではないから。
「…行こう。アキ。」
素早く身支度を済ませたバロンさんが、こちらに柔らかい微笑みを向ける。
「ハルを、お母さんを助けてあげよう。」そういって取られた手に、はい!と強く頷いた。