Angel Beats!-another story-【分岐END[Rパート]】

□Rebuilding the BondsA
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「すまん、流歌…」


それは唐突だった。

え?と目を丸くして落ちていく流歌。

それを目にも留めず、ただ俯いて立つ奏助。

俺はその一部始終を見ていた。

奏助が流歌を、窓から外へと突き落としたのだ。

流歌はそのままちょうど真下にあった花壇に、ドサッ、と背中から落ちて気を失った。

そして“影”に囲まれた奏助は、俺の目を見た。


「お前が守らなくて、誰が流歌を守る?」


そう言われた気がして、俺は何かに気付いたように流歌の方を見る。

するとそこには三体の“影”が意識の無い流歌に迫っていた。

俺はそれを見ていられなくて目を閉じた。

だが。

今度は守れよ、と再び聞こえてくる奏助の言葉が、俺の胸に何か熱いものを生んだ。


「うわぁぁぁあああぁぁぁあ!!」


パンッ!パンッ!パパンッ!!

パンッ!パンパン!パンッ!パンッ!パパンッ!

心からの叫びと共に無我夢中で引き金を何度も引いた。

もし流歌に当たっていたら?

そんな疑念さえ、叫んで吹き飛ばした。


「あぁぁぁあああぁぁぁぁあああああ!!」


そして気付いた頃、俺は弾の無くなった銃をひたすら空撃ちしていて、息を切らしていた。


「――よくやった…」


どこからか、そんな声が聞こえた。

目を開けると、幸い流歌は無傷だった。

“影”もどうやら全て消滅できたようで、すでにその気配は無くなっていた。

俺はトラウマに打ち勝った。

今度はこの手で流歌を守ることができた。

そう思った。

だが、俺はまた大きなものを失っていた。

俺がもっと早くに何とかしていれば、失わずに済んでいたもの。

今更気付いても遅かった。

何故なら、それは二度と取り戻すことのできないものだったから。


「嘘だろ…?」


向かいの校舎の三階、そこにいたはずの人間がいなかった。

絶望的な状況の中で自分の身を挺して流歌を守った奏助が、消えていた。

そこには初めから何もなかったかのように。

ただ、終わった後の静けさが漂っていた。

やるせない気持ちでその景色を眺めていた俺は、そこで気を失うように倒れた。

消えていく意識の中で、楽しかった日々の記憶がビデオのように流れていた。




━━《Rebuilding the BondsA》━━
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