HAPPY BIRTHDAY
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廃れた朱い色の屋根。今にも崩れそうなぼっろい木造の壁。極めつけは、でかでかと掲げられたさびれた看板。
(いや、いや、いや…)
周りを鬱蒼と生い茂ったねこじゃらしに囲まれた衝撃的な外観のその店は、さも昔からそこにあったようなそぶりでどーんと構えているのですが。
ありえないのです。
昨日まで、確かにこんな店、ありませんでした。(だって俺、見たもん。)
間違いなく、ここは空き地だったはずです。
それに、この店を見る限り、どう考えても昨日今日建ったものじゃあありません。(いやそもそも、工事してるそぶりも無かったし。)
(…そんな、バナナ。)
看板には何か書いてあるのですが、あまりに下手くそすぎて、最初の文字が「お」であることくらいしかわかりません。
扉も開けっ放しのその店は、(というかなんとまあ物騒な)さながら、そう、昔の駄菓子屋みたいです。
「そこの、おにいさん、」
(………へ?)
ぽけーっと口を開けて見ていると、しゃがれ声が聞こえました。低いその声はなんだかざらざらしていて、聞き取りにくいものでしたが、確かに聞こえました。
「お入りなさい。きっと、探している物が見つかります。」
どうやら、店の中にいるであろう店主の声のようです。呼ばれてしまったからには、しょうがない。勇気を出して入るしかないでしょう。(それに、少しだけ興味もあったし。)
そろそろと足を進めて、店に入ります。真っ暗な店内に踏み入れた瞬間、ぱちりと音が弾け、オレンジ色の光が店内を照らしました。
(…う、わ……!)
俺、驚きました。そりゃもう、びっくり。
きらきらと光を反射するへんちくりんな形のオブジェ。くるくると忙しく回っている、ちょっと不気味な形の(でも色は綺麗な)飾り。棚にぎゅうぎゅうと押し込まれた、大きかったり小さかったりする色とりどりの箱。何に使うか想像も出来ないような、歯車剥き出しな物体。目玉が勝手にぐるんぐるん回る金色の魚の置物。玉虫色のたくさんの瓶。入口の側にある招き猫にはなんと目が六つもあり、べろんと出された舌に「おいでませ」と書いてあります。(正直ちょっと気持ち悪い)
あっちを見ても、こっちを見ても、物、物、物。所せましと並べられたそれらは、オレンジ色の光を浴びてきらめいています。
(あ、なんかに似てる、)
そう、あれです、映画の、「ハウル」の部屋に似てるんです。
「いらっしゃいませ、おにいさん」
つぶれたその声にハッと我に返り、声のした方に目をやります。
これまた変な形のした椅子(背もたれに変な形の飾り(ネズミ?)がついていて、足が3本しかない椅子です。)に座っていたのは、人間みたいに足を組んでいる、人間みたいに大きな、トラ猫。
「……………へ?」
俺の間抜けな声を聞いて、猫は大きすぎる緑色の目を少しだけ歪めて、ニタアと笑いました。
(そんな、バナナ。)
to be continue...