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□ずぎゅん。
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突然ですが皆さん。今の今まで風邪のひとつもひかずに生きてきた俺ですが。


とうとう、びょーきになってしまったようです。



なんだかね、最近心臓が痛むんです、ずぎゅんと。



さすがにちっとばかし心配になってきたんで、うちのちいちゃな(だがとっても信頼できる)船医に相談をしてみたのです。



結果は、『異常無し』。



嘘だろ、と思いましたが、うちの船医はそれはそれは立派なお医者さまなので、俺は信じるしかありませんでした。






まァでも、その結果も妥当かとも思うのです。



なぜって、痛むのはたった一時だけだからなのです。


それ以外は、ぜーんぜん、これっぽっちもおかしい点はないのです。



「一応おれもそういう症例ないか調べてみるから、サンジも何か心当たりがないかちょっと考えてみてくれ!」

「ああ、分かった。ありがとな、チョッパー。」

船医は気にすんな、とばかりに俺に笑いかけ、カルテを持って部屋を出て行きました。

















なにとなく不安で、俺は夜眠れませんでした。


少しでも落ち着こうと、キッチンに向かいます。自分のテリトリーは、やっぱり落ち着くのです。



「ん?まだ起きてたのか、エロコック。」



がちゃりとドアを開けると、そこにいたのはクソマリモ。今会いたくない奴No.1の男です。





コイツは、なんだかんだで人の気持ちとか体調とかに敏感なのです。






「…あー……まぁな、ちっと寝付けなくて。」


「そうか…」



どうやらマリモはトレーニングの後のようです。汗で湿った肌に、むわりと広がるコイツ自身のニオイ。












【ずぎゅん。】






ゔ………っ!!









「………おいコック、どうかしたのか?」


「…なんでもござーせん」

「………そうか」


しばらくすると、あっさりと心臓の痛みは治まっりました。



「…てめェはなんでここにいんだよ」


がしがしと乱暴に真っ白なタオルでおかしな緑の頭を拭いているマリモに聞きました。


「いや、酒でも飲もうかと思ってよ。」

「また酒かよ!…ったく、てめェにゃ休肝日ってのがねェのかね。」

「年がら年中煙吸ってるお前ェにだけは言われたくねェな。」




……うーん、確かに。







「とにかく、なんか酒ねェのか?」


「…待ってろ、今作ってやっから」


「ん?作ってくれんのか?……悪ィな。」







俺は酒棚からウイスキーを取り、氷を入れた大きめのジョッキにごぷごぷと注ぎました。


冷蔵庫から、レモンをひとつ取り出し、愛用している包丁で半分に切ります。


そのひとつを、ジョッキの上で、右手でぎゅううううっと絞れば。





「あいよ、お待たせ。」


レモンの風味が利いた、爽やかに薫るウイスキーの出来上がり。


「おう、サンキュ。」



マリモは一口含み、それを舌の上で転がしてからゴクリと嚥下しました。



俺はなんだか口が寂しくなったので、(本当なら、ここではタバコを吸うはずなのですが、さっきのやり取りを思い出したので我慢しました。…俺ってば偉い!)残ったレモンをかじりました。



レモン特有の鋭い酸味が俺の舌を刺しました。すっぱいですが、新鮮だからでしょうか、俺には美味しく感じられました。



「ああ、うめェな。」


マリモが満足したように低い声で呟きました。



「やっぱり、てめェが一手間かけると、味が数段跳ね上がるんだな。……さすが、腐っても一流ってとこか。」

「…!!!!!」











その、マリモにとっては最高の褒め言葉であろう一言(…いやでも"腐っても"ってなんだ)を聞いた瞬間、俺の心臓はこれでもかってくらい、ひどく痛みました。






なんだかわけがわからなくなってぐるぐるしていると、なんだか急に昔の事を思い出しました。






(ああ、クリスティーナちゃん!!)


(…あのバカはどうしたんだ?)


(恋したんだとよ)


(コイ?)


(サンジはまだ子供だからわかんねェよ)


(おい、バカにすんな!………で、コイってなんだ?)


(うーん、一言で言えば、一種の"病気"じゃねェか?)


(ハァ?)


(いいかサンジ!恋ってのはな、こう、好きな人を見たり、ときめいたりするたんびに、心臓にずぎゅーーーん!という衝撃がはしるんだ!)


(そうそう!なんつーか、電撃浴びたみたいになるんだよなぁ……)


(いきなりなるのか?それ。)


(あったり前だろ!なぁ?)


(おうよ!だって、)


((恋はいつでも!!ハリケーン!!!!))






















「…………うそだろ」


「あ?」



いやいやだって、そんな、これが今まで憧れてきた"コイ"だなんて!



いやいや嘘だ!信じて下さい、皆さん!



ああでも、心臓の痛みが止みません。昔あのコック達がいってたのはこういう事なのでしょうか。




「…よく分かんねェが、大丈夫か?顔赤ェぞ?熱でもあるんじゃあ……」

「だ、大丈夫だから、ほっといてくれ!」

「…わぁったよ。…あんまムリすんじゃねェぞ。」



そういって、アイツは俺の頭をぽんぽん、と撫でてからキッチンを出て行きました。


「〜〜〜〜〜っ………!!」

お前はそんなキャラじゃねェだろう!!!


俺の心臓は、衝撃を受けすぎて止まっちまうんじゃないでしょうか。


ちくしょうそしたら化けてでてやるクソマリモ!









知らん顔してすましているレモンになんだか妙に腹がたったので、俺はそれに思い切りかぶりつきました。












ずぎゅん。
痛みをレモンのせいにして。







だいぶ大昔に書いたお話。…たしかまだ義務教育終わって無かったハズ。www
サンちゃんがようやく気付いたという設定。でも、恋だとは認めたく無い!みたいな。ゾロはまだ気付いてません。……にしても、なんて乱雑な文なんだ!ww
 

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