だからどうかぼくをあいして。
09/21(Tue) 23:53
SSS
「嘘つき」
志乃は彼方にそう言った。
まるで子供をあやすような、優しい響きをもって。
「嘘なんてついてないよ」
困ったように首を振る彼方に、志乃は微笑んだ。
「嘘つきよ。彼方は嘘つき。絶対一人にしないって言ったくせに、こんな血みどろの檻の中に私を置いてったじゃない」
でもね、志乃は彼方を真っ直ぐに見つめた。
「私はそんな彼方が好きだったよ」
べしゃり、
くずれおちていく志乃に、彼方は泣きだしそうな顔で応えた。
その手に真っ赤な鈍色を握って。
「僕も好きだったよ、志乃ちゃん」
<嘘で固めたカラメルロマンス>
(すれ違ってすれ違ってすれ違って。
そうして漸く、僕らは永遠を手に入れた)
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存在に名称をつけるのは僕らで、僕らに名称をつけるのも僕らだ。
10/09/21 kyo
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