だからどうかぼくをあいして。

▼書込み 

09/21(Tue) 23:53
SSS

「嘘つき」

志乃は彼方にそう言った。
まるで子供をあやすような、優しい響きをもって。

「嘘なんてついてないよ」

困ったように首を振る彼方に、志乃は微笑んだ。

「嘘つきよ。彼方は嘘つき。絶対一人にしないって言ったくせに、こんな血みどろの檻の中に私を置いてったじゃない」

でもね、志乃は彼方を真っ直ぐに見つめた。

「私はそんな彼方が好きだったよ」


べしゃり、


くずれおちていく志乃に、彼方は泣きだしそうな顔で応えた。
その手に真っ赤な鈍色を握って。

「僕も好きだったよ、志乃ちゃん」



<嘘で固めたカラメルロマンス>
(すれ違ってすれ違ってすれ違って。
そうして漸く、僕らは永遠を手に入れた)

――――――――――――――――――――――
存在に名称をつけるのは僕らで、僕らに名称をつけるのも僕らだ。

10/09/21 kyo

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