にじいろ!

□09
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ボンヤリと写ったのは燃え盛る炎。

間近に感じる炎の熱さ、もうもうとした煙で私は息も出来ない。

逃げようにも、そんな体力は無かった。



(このまま…死んでしまうの?)




そう思った途端、一気に意識がシャットアウトした。










「参ったな…これは」


迷彩服に身を包んだ一人の男がそう呟いた。


「某の力不足だ…!早々に気付いておればっ…」


そして、その隣に居る赤い装束に身を包む男が悔しそうに顔を歪めた。



「旦那、自分を責めたって仕方ないだろ?これは、天災なんだしさ」



数日前、甲斐の領地である小さな村の周辺で山火事が起こった。


その炎の大きさはとてつもなく、近付けるものでは無かったのだ。



「お館様なら…止められていたのだろうか…」


赤い男、真田幸村は小さく呟いた。


「あの山火事は、お館様だろうと止められない。それに、あんたは此処の大将だ。お館様に頼るのはやめな」


そう、冷静に言った迷彩の男、猿飛佐助。


幸村は、少し遠くを見詰め拳を握った。


幸村「…そうであったな。すまない」


佐助「分かれば良し」



その時、佐助の前に部下の忍が現れた。


「生存者が確認されました」


そう言って、一人の少女を差し出した。


幸村「!」


佐助「こりゃ驚いた。ほとんど無傷とはね…」


そう言って、佐助は少女の首元に手を当てた。


トクン、トクン。


静かな脈が打たれていく。


「如何、なされますか」


佐助「俺様はどうもしない。旦那の判断だ」


佐助がチラッと幸村に目をやった。


幸村はじっと少女を見詰めこう言った。




幸村「今すぐ、怪我の処置を頼む」


佐助「はいはい。てことで宜しく」


「合点」







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