にじいろ!
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『幸村?』
私はその名前に何故か覚えがあった。
いや、覚えがあったというより
知り合いが…好きとかなんとか
言っていた気がするような…
「幸村様は、山火事で生き残ったあんたを保護して下さったんだよ。
本当に、立派な大将に成られるお方だ」
そう、しみじみしながら女将さんは言った。
『あの、ちょっと話についていけてないんですが…どういう事でしょうか?』
私は、彼女の言う山火事の生き残りという言葉に疑問を持った。
「山火事の事かい?そうか、あんたは覚えてないかもしれないね…」
そう、ちょっと困った表情を浮かべた。
いや、困るのは私の方だ。
『あの…私のお母さんは居ないんですか?』
不意に不安になって尋ねると、彼女はまた複雑そうな顔をした。
「山火事で、生き残ったのはあんただけだと聞いたからね…」
『…あはは、嘘はやめてくださいよ』
そう、ここにはお母さんと旅行に来ているはずで
山火事なんて…あうわけ…
「本当の事だ。あんた以外は死んでるよ」
突然、後ろから聞こえた低い男の声に肩がビクリと反応した。
「さ、佐助様…」
すると、女将さんは顔を見る見る蒼白させた。
私は恐る恐る後ろを振り返ると、
『っ!』
迷惑服に身を包み、オレンジの髪。
そして、こちらを冷たく見下ろす双眼があった。
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