愛をまもれ


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今日はこの小屋で一夜を過ごす事になった。

馬で奥州から甲斐まで一日では行けないだろうしね。

そして私は目の前に居る幸村の様子に苦笑いを浮かべた。


身体をカチコチに固めて、私に一つも目線を合わせようとはしない。

事の発端は、佐助の一言だった。


佐助「ところで寝る場所はどうすんの?俺様、てっきり旦那一人だと思ってたからさ―(ニコリ」


(うわ、リアルブラックスマイル!!)


幸村「そ、そうだったな。ならば…某が小屋の外で寝よう」


『いやいや、幸村さんが武田の偉いさんなんだから中で寝なくちゃ。私が外で寝るよ』


幸村「な、なんと!?ごんべ殿は武田の大事な客人。そのようなお方を外で眠らせる訳にはいきませぬ」


それから、ずっとこの調子で譲り合いを繰り広げていたら佐助が盛大にため息をついた。


佐助「あ―もう面倒くさいから、一緒に寝ればいいんじゃないの?」


幸村「な、ななな…何という事を言って!!」

幸村は顔を真っ赤にしてワタワタし出した。


佐助「旦那はほっといて。ごんべちゃんはどう?」

佐助は幸村のワタワタぶりに全く目も暮れず、私に聞いてきた。


『私は別に良いよ。寝れる場所があるならば』


(とか言いつつ、本当は可愛い幸村の寝顔が見たいんだけど)


佐助「だって旦那。ごんべちゃんは何とも無いらしいよ」


幸村「ぐっ…しかし…」


佐助「あ、俺様外の様子見てこなきゃ。野蛮な輩が寄り付いてこないように」


そう言ってフッと消えてしまった。


(絶対面倒くさくて逃げたよあの人!)


そして、今に至る。


『幸村さん、私先に寝るからね。おやすみ』


特に何も話す事もなく、私は眠気に負けてゴソゴソと毛布の中に入った。

だけど、背中に刺さる視線が気になってくるりと振り返ったら、緊張した面持ちの幸村が。


『幸村さん、疲れたでしょ。寝ませんか?』


幸村「いや!今日は目が冴えている故、眠気は御座らん。お先に寝ていて下され」


『いや、さっきから目がうつらうつらですよ?本当は眠たいんじゃないんですか?』


幸村「いや!これは…」


『ほら、眠たいんでしょ』

幸村「しかし…!!」


その瞬間、イラッときて私はガバっと起き上がり、幸村の手を掴んだ。


『だから、早く寝ようって言ってんの。私は疲れて寝たいのに、アンタの視線が気になって眠れね―んだよ!さっさとこっち来い』


そして勢いよく幸村の手を引っ張って無理矢理毛布の中に入らせた。


幸村「は、ははは…はれむぐぅ!」

破廉恥と言いそうになった幸村の口をむぎゅうと掴んだ。


『は―い、いいコは静かにおねんねしましょうね』





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