空と雲と、君がいる場所。

□成長。
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小さな頃は、泣き虫で引っ込み思案だった。

園内ではいつも一人の記憶が多くて、自由時間にはみんなと話すこともできなくて、一人離れた場所で眺めていると、先生に『みんなと遊んでいいんだよ?』と言われたこともあったけど、ただ頷くだけで近寄ることさえできなかった。

お泊りの日には着いた瞬間からつらくて悲しくてただ泣きじゃくるだけで、先生に『大丈夫だからね』と諭されて。

幼い頃を思い出すと、なぜか思い出す男の子がいて。

3歳の時、初めて入園した時にその男の子がいた。

なぜかやんちゃで強気な男の子で。

お昼寝の時間には、ちょっと目を開けていただけで、『目を開けてたんだろ、立てよ』と言われて、イスをとられて泣いていた。

先生が気付いて『目を開けていたの?眠れなかったんだね』と、イスを取り返してくれたけど、あまりやんちゃだったから注意してもあまり気にせず。

何の時間かは忘れたけど、その男の子が誰かと話していて、突然あたしの方を向いて『おまえがなんで髪の毛を結んでいるんだよ、生意気なんだよ』と二つに結んでいた髪の毛の1つをわざわざ引っ張ってゴムをとられてしまった。

片方だけ結ばれた髪の毛のまま、また泣きじゃくって、だけどあまりのショックでありったけの勇気を振り絞って言った言葉が『返して』だった。

すると、ビックリした風でもなく『なんだよ、生意気なんだよ。返してくださいって言えよ』とただ言われて、『言えないよ』と答えると、『言えるだろ?早く言えよ』としつこく言われて、しまいには何も言えなくなった。

ゴムは、机の上にほうりなげるように返された。

とにかくショックだったのを覚えてる。

先生が異変に気付いてやってくるのを見て、泣きながら初めて訴えた。

『ゴム、とられた・・・』

笑いながら、先生は優しくまたきれいに結んでくれた。

『せっかく可愛くしてくれたのにね』

とにかく目立つ男の子で。
今でも覚えてるけど、再入園する時の初めての朝、あの子がいなければいいな・・・と思っていたのに、先生の後ろからその男の子が顔を覗かせた。

一気に緊張感が増して、でもなんだか久しぶりに見る顔だったのもあって、ちょっと緊張感は和らいだような気がしたのを覚えてる。

今思えば、なんであの男の子は何かとあたしをイジメてきたんだろう。

幼いにしては、それなりにすごく怖くて、いつも怯えていた。

少し怖くてホントは寂しくて、でもようやく卒園を迎えて、ホッとしたかもしれない。

小学生になって、同じクラスになった時もまた不安が襲ったけど、何一つ絡む様子もなく、無事に1年が過ぎた。

何もわかることはなかったけど、ひとつだけわかったこと。

すべてにおいて平均的に何でもできる子だった。

成長するにしたがって、その子のことは忘れてしまっていたけれど、たまに見かけた時にはやっぱり変に緊張して。



やんちゃだった子は不思議と目立つようになって、中学生になる頃にはなんか落ち着いた感じになって。

思い出の端々でいた人たちは、何かを意味している人たちなんじゃないかと思えた。

なぜか忘られない場面があって、なんでこの場面なんだろう・・・なんて思えたり。

でも、自分が今まで歩んできた道のりで、ホントに心から何かを感じたからその場面を記憶しているんじゃないのかなと思えたりする。

不思議なことはいっぱいあって。

でも、何かを感じた時、ふと思い出したり。

でも、思い出したくないばかりの過去の中で、ふと思い出すその人たちはもしかしたら何かでは今と繋がっているかもしれないし、どこかでは何かの形でまた関わっていくのかもしれない。

記憶って何だろう。

なんで、この記憶があるのか。

自分にとって、本当に重要だから記憶は残っているのかな。

でも、それだとちょっと怖いような。

怖かった過去の思い出も、今では普通に思い出せる。
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