小説

□たまには甘えたくなる時だってあります
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 ガチャガチャとドアを開ける音がすれば「ああ、やっと帰って来たのネ」とグレルは呟いた。帰って来たばかりの彼を出迎えるため、玄関まで小走りする。

「お帰りなさい!ウィリアム……?」

 ウィリアムの様子がいつもとおかしい。

 玄関に座り込み、俯いたまま動かないウィリアムへ近付き、しゃがみ込むグレルは同じ目線で彼の顔を覗き込む。

「ウィル…どうしたの?具合でも悪いの?」

「グレル」

「……な、なあに?ウィルが呼び捨てでアタシの名前を呼ぶなんて珍しいわネ」

「一一一……い」

 名前を呼び捨てられて戸惑うグレルだが、俯いたまま何事かを呟くウィリアムの言葉に首を傾げる。

「…ウィル?今なんて言ったの?」

 その言葉にようやくウィリアムは顔を上げた。心配そうな表情を浮かべるグレルの胸元にウィリアムは顔を埋め。

「私にキスをして下さい」

「……へ?」

 突然の行動と言葉に目を瞬かせ、何をどう返していいかわからずグレルは固まる。

 ウィリアムはぐりぐりと甘えるようにグレルの胸元へ頭を擦りつけるが、まったく動かないグレルにまだかと催促するようにじっと見つめていた。

「キスして下さい」

「……ウィル……あの……?」

「早くしなさい」

「え、ええ……」

 グレルは言われた通りに、恐る恐るウィリアムの唇へ自らの唇を近付けた。

 一一一ウィリアム。急にどうしたのかしら?

 ウィリアムの髪を優しくひと撫でをして、ゆっくりとグレルは口づけをする。

「ん、んんっ……グレル……」

 いつもはグレルからキスを求めていたが、今回は逆だ。ウィリアムは積極的に舌を絡ませ、ねだるように吸い付いていく。

「……ウィル?ん……ねぇ、ウィリアム……っ」

「……はぁ……っ。もっと……して、下さい……」

 グレルの言葉に耳を貸すこともなく、ただ求めるようにウィリアムはキスをねだる。グレルは仕方なくウィリアムの気が済むまで重ね合わせた唇を離さなかった。


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