小説/2

□本日はデート日和/前編
1ページ/7ページ

 死神派遣協会では、ごく一部の間でだが人間界でデートをする死神が増えてきた。その為に今まで魂の回収率が遅く、残業も多かった管理課も、デートの為にとせっせと頑張る回収課のお陰で残業率が徐々に減っている。
 そんな影響があってか、普段は不真面目な勤務態度だったエリックやグレルまでもが定時に仕事を終わらせるというノルマを達成させていた。遅刻や規則違反。無断早退を覗けばの話しだが。

「なぁ、アラン。明日は休みなんだろ?久しぶりに俺の家に来ないか?」

「エリックさんの家にですか?ええ、構いませんよ。また妙な女性物のドレスや下着を着せなければですけど」

「わっ、分かった!分かったから!ここでその話題を出すのだけは勘弁してくれ!それから……俺とお前だけの時はエリックって呼べっていつも言ってるだろ?それから敬語も使うな」

 定時に報告書を提出した後、長い通路の廊下でたわいもない話しをするエリックとアランの脇を、すれすれに通り抜けていくグレルはドタバタと急ぎ足で駆け出していった。

「おい、グレ……アイツ、何であんなに急いでるんだ?」

 グレルの背中を眺めながら話すエリックを見て、くすくすとアランは笑う。何故か自分が笑われているのか、さっぱりわからずエリックは不機嫌そうな表情を浮かべる。

「ごめん、ごめん。きっとグレルさんもエリックさ一一一エリックと同じことを考えてるんだなって思ったからさ、おかしくってつい……ふふっ」

「はぁ?アイツと俺が同じことを?勘弁してくれ……俺は変態でもなければオカマでもねぇんだぜ?」

「そういう意味で言ったわけじゃないよ。相手を“想う”気持ちかな」

「はぁ?」

 さっぱり理解が出来ないエリックを見て、またアランはくすくすと笑い出した。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ