過去拍手小説

□些細な悪戯
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 いつものようにやや遅れながら、死神派遣協会へグレルは出勤をする。
 おかしい。
 直接ウィリアムから死亡者リストを受け取りに管理課へ来たはいいが、微かな異変に気づいたグレルは心の中で呟いた。

「ねぇ、ウィリアム」

 わざとだ。
 グレルはあえて、その方向からウィリアムに声をかけた。

「……グレル・サトクリフ。また遅刻ですか?」

 グレルの方へは振り向くことなくウィリアムは話し掛ける。
 一一一ああ、やっぱりネ。
 それを確信したグレルは口元を吊り上げ、ニンマリと笑う。
 くるりとウィリアムの右側に回れば、彼の肩を掴み、顔を近づけた。

「ねぇ、ウィル。おはようのキス、まだだったわよネ?」

「……まったく。来て早々、気持ちの悪いことを言わないで下さ一一一!?」

 近づいてくるグレルの顔を逸らそうと、ウィリアムは首を背けようとするが、突然襲い掛かる激痛に首を抑える。
 グレルはニンマリと笑いながら、その隙にウィリアムの唇へ口づけをした。
 周囲の視線も気にせずに。

「ん一一一……甘い。今日はミルクティー味なのネ。あ〜んな寝方をするから、首が寝違えちゃったんじゃない?今夜の夜遊びは……控えた方がいいかしら?」

 してやったりの顔で悪戯っぽくグレルは話す。その場で硬直していたウィリアムはやっとのことで、脇に抱えていたファイルを持ち上げた。
 その日、管理課にこの世のものとは思えない音と、グレルの叫びがけたましく響き渡った。


2012.05.03.end.

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