過去拍手小説

□銀と赤の出会い
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 幼い頃のアタシの記憶一一一。

「ふぇ……っ!ひっくっ!ぐすっ!」

 生まれつきの赤い髪のせいでアタシはよく死神仲間から馬鹿にされていた。

 だからよく死神図書館の本棚の隅っこで泣いていたの。

 小さい頃のアタシにとっては秘密の隠れ家みたいなもので、幼なじみのウィルと一緒によく遊びに来ていたっけ一一一。

 そして今日も馬鹿にされては死神図書館に隠れて泣いていた。ここに居れば必ずウィルが迎えに来てくれるとわかっていたんだと思うわネ。

「どうして泣いているんだい?」

 アタシはてっきりはウィルだと思っていた。でも、すぐに違うとわかればそんなことなど気にせずにアタシは自分の不満を見知らぬ相手にぶつけたの。

「一一一っ、だってぇ!だってぇ!ボクの髪が赤いから……っ!みんなと同じ黒じゃない、からっ!ひっくっ!死神に見えないってみんなが……っく、いうんだ!ひっくっ!お兄ちゃんだってそう思ってるんでしょう?」

 涙でぼやけて視界が潤み、話しかけている相手が誰なのかなんてわからない。背丈は子供のアタシよりもかなり高くて、声のトーンからそのヒトは男だとわかったワ。

 印象的だったのは長く伸ばされた銀の髪。アタシのよく知る黒い髪とはまったく違っていたわネ。

「僕は思ってなんかいないさ。それに、皆が君のことをそう言うのは君のことが羨ましかったからじゃないのかな?」

「……羨ましい?嘘だ!そんなことないもん!」

 ムスッとした顔で頬を膨らませるアタシに、そのヒトは微かに笑いかける。

 視界は相変わらず涙で潤んでいたから、そのヒトの顔がまったく見えなかった。

 だけどそのヒトは肩まで伸びたアタシの真っ赤な髪を摘まんでこう言った一一一。

「他の皆は“黒”でも君には君だけしか持っていない“赤”があるだろう?それは“君”という存在を強く主張ができていいんじゃないのかな?」

「そんざいを……しゅちょう?」

 よくわからない言葉に首を傾げるアタシにそのヒトは優しく頭を撫でる。

「うーん、そうだねぇ。……例えば君が皆と隠れん坊をすると、真っ先に君が一番に見つかっちゃうくらい君の髪は物凄く目立つってことさ」

「な、なんでそんなことがわかるの?お兄ちゃんはボクが隠れん坊でいつも見つかっちゃってたところを見てたの?」

 驚くアタシはいつの間にか泣き止んでいた。瞳に溜まった涙を拭いていたら、ふと耳元でそのヒトに囁かれたの。

「僕は初めて君の“赤”を見たときに一目惚れをしたんだ。太陽のように燃え上がり、血のような鮮血の“赤”が大好きだよ?もっと自信を持ってごらん。君ならそう遠くないうちに変わることができるさ」

「……ふぇ?」

 アタシの唇に何かひんやりとし暖かいものが触れた。一瞬の出来事にアタシはキョトンとした顔でそのヒトを見上げようとしたら、大きな手がアタシの頭を撫でて視界を遮ってしまう。

「次に会う時は成長した君と再会出来ることを願っているよ、小さな赤い死神くん」

「ボクの名前はグレルだよ?グレル・サトクリフ!」

 どうしても名前を覚えてもらいたかったアタシは遅い自己紹介をする。

 そしたらそのヒトも口を開いて何かを言おうとしたけど一一一。

「グレルー!どこにいるんだよー?せっかくお前を虐めた奴をこらしめてきてやったんだぞー!」

「……ふぇ、ウィル?」

 幼なじみのウィリアムの声にアタシはそのヒトから目を離してウィルの名前を呼んだ。

「グレル!良かった。またこんなところで泣いていたのか?まったく、しょうがない奴だな」

「……き、今日は泣いてばかりいたわけじゃないもん!あのねぇ、ウィル!このお兄ちゃんがボクに一一一あれ?」

 そこにはさっきまでいた銀髪の男はどこにもいなかった。


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