小説
□アナタ(貴方)と私(アタシ)を繋ぐ赤
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仕事の休憩時間やお昼休み、一日の仕事が終わるとグレルはいつもウィリアムがいる執務室に姿を現している。
お昼時。午前中の仕事を終わらせたグレルは帰りがけ、お店で買ったサンドイッチを手に執務室の扉を開けた。
「ウィリアム!お昼ご飯一緒に食べま……あら?」
気配はするものの室内にウィリアムの姿はなく、不思議そうにグレルは小首を傾げる。
一一一もしかして、あそこかしら。
テーブルの上にサンドイッチを置き、なるべく足音をたてずに奥の扉へグレルは向かう。扉の前に立ち、ドアノブをゆっくりと回した。
一一一ンフッ。やっぱりここにいたのネ。
そこはウィリアム専用の仮眠室。
どうやら休憩時間中にも関わらず仕事を続けていたのだろう。テーブルの上には散乱された報告書が置かれ、ウィリアムはベッドの上ではなくソファーに横になって眠っていた。ウィリアム自身はそんなつもりがなかったのだろうが、仕事の疲れかいつの間にか眠り込んでしまったらしい。
「……すー……すー……」
心地よい寝息をたてて眠るウィリアムの顔をそっと覗いて見るグレルは「寝顔が子供みたいで可愛いわネ」とクスクスと笑みを溢しながら呟いた。
一一一風邪、引いちゃうわよ?
ベッドに置かれていた毛布を手に取り、ウィリアムの傍へと近づくグレルはその身体に毛布を掛けようとした時一一一。
一一一ぐいっ!
「へ?」
毛布をかけるグレルの腕を掴むウィリアム手。恐る恐る視線を向けると、無言でグレルを見詰めていた。
「ウ、ウィル!?起きてた一一一っ!」
突然ガバリッと身体を起こしたウィリアムはそのままソファーへと押し倒す。
「……グレル・サトクリフ……」
両腕をガッチリと押さえられ、逃げ場を失ったグレルは慌てふためく。
「ち、違うの!別に寝込みを襲おうとしていたんじゃなくて!ただアタシは毛布をかけてあげようとして一一一っ!?」
殴られる。そう思ったグレルが反射的に目を閉じた。
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