小説
□死神の休日、退屈な休日、不機嫌な休日、幸せな休日
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窓からフワリッと白いカーテンが風に吹かれて流れ込む。
珍しく同じ日に休暇を取れたウィリアムとグレルはほのぼのとした休日を過ごすのだが……。
「もう!これじゃあデートどころか、ただの仕事じゃない!」
読んでいた本を力任せに閉じるグレルは大声で叫ぶ。それを隣で聞いていたウィリアムは迷惑そうに眉を潜めた。
「煩いですよ、グレル・サトクリフ。これは仕事ではなく、私の趣味です。貴方も付き合ってくれると言ったでしょう?」
「ただの読書ならネ!」
そう言いながら先ほど読んでいた分厚い参考書並の本を、グレルは両手で掴む。本の内容よりも本の重さの方が気になって読めないのだ。
「どこを探したって、こ〜んな分厚い本を読む馬鹿はいな一一一いたっ!」
「黙りなさい」
遠慮なくデスサイズの代わりに本でグレルの頭を叩き、ウィリアムは眼鏡を押し上げる。
「いいですか?これは死神の仕事に役立つ本です。……それより、貴方は先程からまったく読むペースが遅いじゃないですか。私はもう半分は読み終わりましたよ?」
「だって、つまんないんだもん!てか、本でアタシの頭を叩かないでヨ!それに、毎日読書を読み漁ってるアンタと一緒にしないでくれる?ねぇー、ウィル。せっかくの休日なんだから、何処かにお出かけしまショ?アタシたちの休みが重なることなんて滅多にないのよ?」
ソファーから立ち上がるグレルは無理矢理でも外にウィリアムを連れていこうと腕を引っ張る。だが、その腕はあっさりと振り払われてしまった。
「結構です。行きたければ貴方だけ行けばいい。……気分転換に紅茶でも淹れてきます」
「アタシはウィルと一緒に行きたいの!」
キッチンへと向かうウィリアムの背中に向かって大声でグレルは叫ぶ。やや不機嫌そうに溜め息を漏らすウィリアムは苛立ちの表情を浮かべて振り返った。
「ですから、結構だと言っているでしょう?だいたい、私は一一一!?」
ヒュンッ、と音をたてながら向かってきた物をウィリアムは素早く避ける。
ドサリッと激しい音をたてて壁にぶつかったのは、先ほどグレルが読んでいた本だ。
「グレル・サトクリフ」
より一層ウィリアムは眉に皺を寄せ、グレルを睨みつける。
当然、グレルも怒っているだろうと思っていたのだが、予想外の表情を浮かべていた。
「ウィルのバカ!!せっかくの休日なのに!そんなにアタシと一緒にいたくないのネ!?」
顔を真っ赤にさせ、涙をボロボロ流すグレルは上着も羽織らず、部屋から出ていってしまう。
「私は別にそういうつもりでは……まったく」
残されたウィリアムはグレルが出て行った扉を見詰めながら小さく呟いた。
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