小説

□たまには甘えたくなる時だってあります
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 ウィリアムは気が済んだのか、ようやくグレルの唇から口を離す。

「……ウィリアム、リビングに行きまショ?スーツが皺になっちゃうわ」

「私を抱き締めて下さい」

「……アタシの話し、ちゃんと聞いてた?」

「私を抱き締めてください」

「ウィリアム」

「早くしなさい」

「……はぁ」

 何を言っても同じ言葉を返すウィリアムに呆れた表情を浮かべ、グレルは仕方なく抱きしめる。

「ん……」

 ウィリアムは胸元に顔を埋め、猫のようにゴロゴロと甘えた。整った髪が崩れても気にすることなく、子供のように甘えるウィリアムの姿に思わず「可愛い」と思いながら胸をキュンッとさせたグレルだが、ここでハッと我に変えると慌てて首をブンブン横へ振り。

 一一アタシったら何やってんのヨ!

 今度こそウィリアムをリビングに行かせようとグレルはわざと身体を強引に離した。その行動にウィリアムは物言いたげな表情を浮かべるが無視をする。

「もう満足したでショ?こんなところに長くいたら風邪を引いちゃうワ。さ、早くリビングに行きましょ?」

「嫌です」

「……頭、撫でてほしい?」

「ええ」

「リビングまで行ったらしてあげてもいいわヨ?」

「では、貴方が私を抱き上げてリビングまで運んで下さい」

「あのね……」

 あまりの我が儘っぷりにグレルの口元がピクッとヒクつくが「ここで怒ってはいけない」と、自分にそう言い聞かせてウィリアムを抱き、リビングまで運んだ。


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