小説/2

□紅い桜の花びら、桜の木の下を掘り起こしてみた
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 たどり着いた場所は人気のない平原だ。
 花びらがグレルを呼び寄せたのか、紅い桜の木は平原一面を覆いつくしている。

「ふーん、なかなかイイ場所じゃない」

 満開の紅い桜の木を目の前にして、グレルはうっとりする。
 だが、不意に何かを感じれば持っていたデスサイズを肩に担ぎ上げ地面へしゃがみ込んだ。

「アンタたち、ツイてるわネ。悪魔よりも先に、しかも、こんなに美しいレディーに出会えたんだから」

 桜の木の周りに、いくつかの回収されていない魂が浮遊していた。
 それも一つや二つではなく、夥しい量の数だ。
 その魂が実体化すると、幼い子供や赤子で溢れ出す。その光景に妙な違和感をグレルは抱くが、気にせず魂を回収していった。
 ふと、グレルはあることに気づく。
 本当なら気づかない方が良かったかもしれないが、嫌でもグレルの靴底にその感触はずっと残っていた。
 何度も掘り返された土。
 それが紅い桜の周囲を囲むような形で続いている。

「……なんなのヨ?」

 死神は魂を回収することが仕事。
 それ以外の仕事は死神がやるべきことではなく、人間がやるべき仕事だ。
 グレルの足元に、幼い赤子の魂が寄り添う。

「坊や、いい子ね?ゆっくり眠りなさい」

 地面にしゃがみ込むグレルは優しい口調で赤子に語りかけ、デスサイズを軽く振り下ろして赤子の魂を回収する。
 魂を回収して死神界へ帰るだけ。
 たったそれだけのことだ。
 なのに、グレルは手に持っていたデスサイズを掘り返された緩い土に向かって突き刺した。
 桜の木の下に、何があるのかを確かめる為に。


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