アフォ小話

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遠呂智なんていう蛇野郎が消えてから数ヶ月。戦も起こることなく、しばらく平和な日々が続いていた。



こんなにも穏やかな毎日。
これまで臨んできた戦の先に描いていたであろう世界が、眼前に広がっている。


あの蛇男が何を望んでいたかは知った事ではないが、今この風景を目に出来ているのは間違いなく、奴の存在あってのもので。



あまりに私情ではあるが、結果だけ見れば、奴に感謝してやってもいいかと思った。










「…あんたがいなけりゃ尚平和なんだがな……」




俺は隣の男を睨んで吐き捨てるように言った。




「暇なのだから仕方あるまい」


「寝る暇あるなら帰れよ」




暇……。
こいつは、この曹魏の御曹司様は、この在るべき平和を『暇』と……。



この安穏も長くはない気がした。




暇暇と呟きながら、こいつはこの場から去ろうとはしなかった。つまらなそうにぼんやりと空を見上げて、何をするでもなく、ただ其処に居る。



そういう俺とて、特に用があるわけではなく。
普段ならしばらく続ける悪態だの愚痴だのも、今は発する気になれず、ため息ひとつついて横になった。



ふ、とそちらに顔を向ければ、空を射ていた瞳はふせられ、規則正しい呼吸が聞こえてくる。






――黙ってりゃいい男なのに……






よく見れば顔立ちは端正そのもの。これだけ見れば中身等疑いようも無い。


しかし、ひとたび口を開けば、とても近い将来国を背負うべき人間とは思えぬ発言・行動の連発であり、仕舞いには所謂セクハラ攻撃とくる。








知らぬ間に抱かれた感情だった。




始めは事が飲み込めず、いわゆる御乱心ってヤツと判断し、思い切りぶん殴ってやった。

次第に理解こそ出来たものの、それを受け入れる余裕は無かった。
当然だ。相手は…男……、しかも敵国の太子、とくれば誰であろうとリアクションに困るだろう。
それでもコイツは引かなかった。迷惑だった。鬱陶しくて鬱陶しくて、会えば必ず頬に紅葉をつくってやって、『死ね!』なんて台詞も、何回言ったか覚えて無い。(殴った回数こそわかんねー)


にも関わらず、毎日にも近いくらい国を越えてやって来ては、土産だのなんだのって、下らない話して帰るんだ。
やってらんねーよ。


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