染まらない華
□風の向こう側
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ギギッ…
少し錆びた扉は軋んだ音を響かせた。
カズはそれを気にもせず、屋上に出ると扉を締めた。
多分居るだろうと思っていたイッキの姿を視線の先に見つけると、カズは傍に近寄っていった。
イッキは空に手を伸ばし見上げたまま、カズを見もせずに口を開く。
「お前も来たのか?」
「こんなに天気がいいのに、自習なんてタルイし…」
そう答えると、カズはゆっくりとした動作でイッキの隣に腰を下ろした。
そして、二本持ってきた紙パックのジュースの一本をイッキの目の前に差し出す。
「サンキュ、流石はカズ気がきくな♪」
喜び受け取るイッキに「まあな」と答え、カズは笑みを浮かべた。
手にしていたもう一本の方を、ストローを挿し口にする。
流れ込む冷たさが心地良い。
やっぱり買ってきて正解だったな…。
そう思っていた所に、いつも被っているニット帽をイッキに剥ぎ取られた。
流れる風に、零れた髪がフワリと揺れる。
カズは突然の出来事に驚き、隣に座るイッキを振り返った。