染まらない華

□風の向こう側
2ページ/6ページ






ギギッ…





少し錆びた扉は軋んだ音を響かせた。

カズはそれを気にもせず、屋上に出ると扉を締めた。

多分居るだろうと思っていたイッキの姿を視線の先に見つけると、カズは傍に近寄っていった。

イッキは空に手を伸ばし見上げたまま、カズを見もせずに口を開く。



「お前も来たのか?」


「こんなに天気がいいのに、自習なんてタルイし…」



そう答えると、カズはゆっくりとした動作でイッキの隣に腰を下ろした。

そして、二本持ってきた紙パックのジュースの一本をイッキの目の前に差し出す。



「サンキュ、流石はカズ気がきくな♪」



喜び受け取るイッキに「まあな」と答え、カズは笑みを浮かべた。

手にしていたもう一本の方を、ストローを挿し口にする。

流れ込む冷たさが心地良い。

やっぱり買ってきて正解だったな…。

そう思っていた所に、いつも被っているニット帽をイッキに剥ぎ取られた。

流れる風に、零れた髪がフワリと揺れる。

カズは突然の出来事に驚き、隣に座るイッキを振り返った。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ