染まらない華
□君が好き
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初めは好奇心だったと思う。
どんな反応をするだろう?
そんな感じだった気がする。
でも今は…、少しでも俺の方を見てもらいたくて触れる。
何も映さないその瞳に、その心に一瞬でも俺を映してくれたら…。
でもそんなことを考えてるなんて、渡は思ってもいないんだろうな。
「渡…」
ベットに腰掛け、最近買った小説を読んでいた渡に、俺は抱き着いた。
すっぽりと俺の腕の中に納まる、渡の細さと体温が心地良い。
「麻生?」
不思議そうに渡は俺の名を呼んだ。
俺はこの声が好きだ。
静かに澄んだ綺麗な声。
だから、その声で俺の名前を呼んで欲しいと思う…。
「渡…、いつになったら俺の名前呼んでくれるんだよ…」
言ってから俺は後悔した。
もし、知らないと言われたら?
多分暫く立ち直れない。
何馬鹿やってんだよ、俺…。