染まらない華
□桜の舞い散る日
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「さぼるつもり?」
意外な行動に不二は不思議そうに疑問を投げ掛けた。
「後で走るっスよ」
いつもより柔らかい低い声が答える。
「そう…」
その声が心地良さそうに、静かに目を閉じた。
柔らかそうな不二の髪が風にフワリと揺れる。
「……」
不二の顔の傍に手をつき、形の調った唇に海堂は唇を重ねた。
そしてゆっくりと離れる。
「…先輩、…好きっス」
真っ直ぐに見つめ、囁く。
強さを含んだその視線を受け止め、不二は少しだけ体を起こした。
流れるような静かな動きで、海堂の唇をそっと…指でなぞり見つめ返した。
「…本気?」
「冗談でこんなことしないっス」
何気に呟いた疑問に、海堂は強い意思を篭めた言葉を紡いだ。