小説
□want to be・・・
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want to be・・・
※七年後設定
正直彼女とここまで深い関係になるなんてその時は全く思わなかったし、想像したことすらなかった。
そもそもが「エイリア襲撃」なんて言うハプニングが原因の出会いで、つまり、出会うべくして出会った、なんてことですらない。
けれど、今はその出会いに感謝している。
アメリカへ旅立つ時に見せてくれた、泣きそうな笑顔はまだ今でも俺の心に残ってる。
「つまり何が言いたいのかっていうとね。
・・・俺はリカと出会えて良かったってことかな。」
「うちもダーリンに出会えて良かったで?」
今、目の前で微笑んでくれる彼女を手放そうとは思わない。
愛しているよ、と囁いて額にキスを贈れば、彼女はくすぐったそうに目を閉じた。
小さなリップ音を立てて、無防備な唇にも口付ける。
「リカ、今日は何の日かわかる?」
「当たり前やろっ! 今日はうちとダーリンの、結婚記念日やで?」
そういった彼女に満足してうなづいて、服のポケットから小さな箱を取り出した。
俺たちの左手に輝くのは、一年立っても色褪せない結婚指輪。
だから、彼女に上げるこの箱の中身は、俺の気持ちのほんの一部。
プロサッカー選手駆け出しの俺には、彼女に豪華なものを贈れるほどの財力はないけれど。
「今はこれで、我慢してて。」
彼女の首元には、銀に光る、サッカーボールをかたどったペンダント。
俺たちを出会わせてくれた白と黒。
「おおきに。気に入ったでコレ、ずっと大事にする!!」
本当に嬉しそうな彼女を見ると、俺まで嬉しくなって。
幸せの大きさに上限なんかないんだなぁ、ってしみじみ。
「あのな、ダーリン。」
「ん?」
「子供出来たみたいや。2ヶ月って言われた。」
彼女の言葉をかみ締めて
・・・。
「本当っ!? よくやったリカ!!」
「はわ・・・、ダーリン苦しい!」
思いっきり抱きしめた腕をぱっと放すと、彼女の顔は幸せに満ちたような表情。
きっと俺も同じような表情なのだろう。
「大丈夫だよ。子供もリカも、絶対守るから!!
あぁまず名前をつけてあげなくちゃ! 男の子かな女の子かなっ!!」
「ダーリン気ィ早いって。」
呆れたような彼女の声に、俺はバツが悪くて頬を掻いた。
幸せを賛美しよう。
(君に出会えて時点で、俺は相当の幸せ者)