短編

□傷にご注意
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【傷にご注意】



パリーン



食器の割れる音がした。珍しい事もあるものだ、あの花村さんが手を滑らすなんて。続なんて気にもせずにテレビ見てるし。


『花村さーん大丈夫ですかー?』


ひょっこりとキッチンに顔を出した私は、床に散乱している破片たちを見てフツフツと怒りをおぼえた。


『それ私のマグカップじゃんかー!!』


ちなみに続に買ってもらった物だったりする。私の微々たる持ち金ではコップのひとつも買えなかった、という悲しすぎる思い出の物だ。


「すみません、私としたことが」
『・・・割っちゃったのは仕方ないよ』


しょんぼりしながら破片を拾い集める。また買えばいいしね。明日からお金貯めないとなー、節約節約。


「片付けなら私がしますから
それに危ないから止めてください」
『別に大丈夫ですよー
―――あ、痛い、切っちゃった』


あははー大丈夫じゃなかったーと、にへらと笑った。じーっと自分の指を見つめる。出血なんて久しぶりだなと、ボーっと思っていたら花村さんに腕を捕まれて、そのまま私の指をぱくり。


『ちょっ!?花村さん何して―――っひゃ』
「消毒ですけど?」
『や、やややや止めてくださいっ!!』


花村さん絶対面白がってる、確信犯だよ!!指舐めないで、消毒くらい自分でするから!!恥ずかしい、止めろー!!


「・・・顔真っ赤ですね」
『誰のせいですかっ!!
ひゃっ、うぅ・・・』
「・・・あとは私がやっておきますから
気を付けてくださいよ」


せっかく心配して来たのに何なんだこの仕打ちは。恥ずかしい思いをしただけじゃんかよー。涙目になりながらトボトボと絆創膏を探しに歩く私なのであった。










(オマエ、わざと割っただろ)
(・・・何のことですか?)
(救急箱あるのに絆創膏ないってどういう事だー!!)


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