長編
□黒
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【09:黒】
床、壁、天井、全てがコンクリートで出来た四角い部屋、もとい牢に横たわる女がひとり。手には手錠、足には足枷が取り付けられており各々から鎖がのび壁に固定されている。
天井の明り窓から入る月光だけが唯一の明かり。その明かりでうっすらと見える女はというと、顔色が悪く嫌な汗を流していた。
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『何よ、真っ暗じゃない』
目を覚ましたら辺り一面黒、黒、黒。暫くたったら目が慣れるだろうと思ったけど、やっぱり何もなく一面真っ黒。立っているというよりも、浮いているに近い感覚。
『そもそも私は捕まったハズなんだけど
それとも既に実験体にされちゃったのかしら
・・・笑えないわね』
はぁ、と一つ溜め息を吐いて一旦落ち着く。能力の類いが一切使えない事からすると、桃瀬の時みたいな影の中って事はなさそう。ユラユラと揺れるこの空間で、ふと聞こえてきたのはノイズ混じりの音。
「―――――」
『・・・、何か聞こえるような・・・?』
姿形はなく、音だけがこの黒い空間にエコーする。視線を何処に向ける事もなく、静かに目を閉じた。
「―――――」
『(此処が何処かは分からないけど、あの連中に捕まっているのは確実
なら、使えるモノは使うに越したことはないんだけど・・・)
何を言っているのかさっぱり分からないけど、私を使いたいならご自由にどうぞ
その代わり、私も貴方を使うわよ?』
「・・・」
微かに空間が揺れた。何もないはずなのに、周りの黒が私に迫ってきているような、そんな気がする。そう感じる。
そしてその黒いモノに取り込まれた私は、頭の中を覗かれるような気持ちの悪い感覚と酷い嘔吐感に襲われる事となる。
『(ふふふ、ふふふふ・・・
私はいったい、どうなっちゃうのかしらね・・・?)』
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