長編

□不明なチカラ
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【10:不明なチカラ】



『(見張りなしに監視カメラもなし、・・・・・・ナメられたものね
“私の”能力を封じたのは誉めてあげてもいいけど、第三者に対してのガードが低い
だからその第三者と私がコンタクトをとれたのだけど)』


チャラリ


手元の鎖をまじまじと見る。見たところ極めて普通の鎖。大抵のものは外そうとしたり壊そうとしたりすると、何らかのショックが返ってくるものだが、何処までも手抜きだ。そこまでして研究費、実験費に使いたいのか。


『ねえ何処かの誰かさん、貴方の出番じゃないかしら?』


声に出してみるも返答はない。そもそも彼方の声が聞き取れなかったのだから此方の声が聞こえているのかも分からない。


『・・・っ、?!』


さらさらと鉄の鎖が砂と化した。突然の出来事で言葉がでない。私の独り言に近かったあの声はどうやら聞こえていたみたい。


『・・・何でもいいけど、とにかく此処から出ないとね
(それにタダで私を出した訳ではなさそうだし)
・・・この鉄格子も何とかなるかしら?』


ツーっと格子を指でなぞる。すると、なんと指がすり抜けた。

『(この能力、何かに偏りがあるのかと思っていたけどそう
でもないのかしら・・・)』


さっきの通り、見張りの類いはない。コンクリートで固められた薄暗い細道を、私は早足に脱けだした。




**********


『・・・・・・・・・』


何かに導かれたかのように迷いなく進んだその先には、あのリーダー格の白衣とその部下数名。自動扉の脇に身を潜め中の様子を伺う。


『(そもそも私の目的は絶つもの―セイバー―であって、アイツは放置でも構わないのだけど)』


なぜそれをしないかというと、単純に出来ないからだ。この妙な“能力”、自分の意思で扱えるようだが大本は彼方にあるらしい。コイツ等の排除関係のモノでないとこの能力は取り上げられてしまうのだ。


『(ギブアンドテイクって事ね
とにかく、アレを始末すれば私の目的も達成に近づくわ)』


扉から出てきた“いかにも雇われました”な補佐らしき男を、扉が閉まるが否や使われていないであろう埃臭い薬品庫へと放り込む。後ろから後頭部を掴み、床へと打ち付ける。


「い゛っ?!何だおま―――い゛だだだだだ!!」
『黙りなさい、ダメガネ
・・・別に殺そうとかそういう訳じゃあないのよ?ただ、ちょーっと頭の中を覗かせてもらおうと思ってね』


にこり笑みを浮かべると、自動的に能力が発動した。




**********


赤く染まった白衣が数体、床へと転がっている。無論、私が転がしておいたのだけど。目の前に立つ男が最後の一人。増援が来る前に片付けなくてはならない。


「こりゃビックリ、どうやって抜け出した?」
『・・・親切な人が助けてくれたの
それにしても、警備緩すぎないかしら』


コイツの後ろには台がひとつ。そこにはあの時のあの子が横たわっている。睡眠薬、もしくは麻酔でも投与したのか全く目を覚ます気配はない。


『何だかよく分からないけど、貴方には死んでもらわないといけないみたいだから、大人しく頭なり心臓なりぶち抜かれてくれない?』


先ほどのダメガネ君から拝借した銃をクルクルと指で回し、銃口を相手へと向ける。この男が此処のリーダーで一番偉いと言う事は分かっている。


「オイオイ、そんな小銃でオレに勝てんかあ?・・・・・・、この剣の餌食になって終わるのが関の山じゃね?」


ズガンッ


銃口から煙が上がる。奴の右腕を狙って放った弾丸は、奴の持つ“それ”によって弾かれる。そう、私の探し物である絶つもの―セイバー―によって。


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