長編

□小さな刃
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【11:小さな刃】



放たれる弾丸、剣を薙ぎ衝撃波が私を襲う。残りの弾は装填されているごく僅かなもの。自分の能力が使えない私は“誰か”の能力を借りている。


カチリ


『(っ、弾詰まり?!マズイ、この状況で―――)』
「ハーッ!!ぶった斬ってミンチにしてやるよ!!」


使えない銃を咄嗟に相手へ投げつける。時間稼ぎにすらならない事くらい分かってる。剣が私の頬をかすめ真横へと突き刺さった。


『っ、使い方がなってない、わね』


近距離での戦闘では間違いなく殺られる。能力の差は有れど、私は丸腰で相手は遺産を武器に使っているのだから。

そして距離をとろうにも後ろは壁、真正面には敵。逃がすまいと私に覆い被さるようにしているせいで身動きがとれない。


『・・・退きなさいよ』
「この状況でよくそんな口が聞けるな小娘
・・・さて、何処からいこうか?」




**********


身動きがとれずに数分、剣先が何度も体をかすめる。敵の趣味の悪い攻撃のせいで服がズタズタなのだけど、どれもかすり傷程度のもので致命傷には及んでいない。


『何時まで遊んでるつもりなの?』
「ハッ、意図的に軌道を曲げてるヤツがよく言う・・・」


グサリ


目の前の男が、刺された。左胸の、心臓がある筈の部分から刃が顔を見せている。白衣が徐々に鮮血へと染まる。


「あ゛?!何だ・・・?」


コイツの後ろには誰も見えない。いったい誰が・・・?転がっている奴らの数は変わっていない。あとは、私と目の前のコイツと―――


『(あの子?!)』


台の上に寝かされていた子、私が偶然遭遇したあのオッドアイの子。コイツの背中越しに台を見るも、いない。視界に白い髪がちらつく。


『?!貴方・・・』
「だめ・・・、ぼくがみつけたの」
「このガキィ・・・!!」


隙を見て、頭に一発蹴りを入れる。続いて、ふらついて倒れる奴の手からセイバーを弾き落とす。そして、それを追う奴の首筋に手刀を叩き込み、黙らせる。


『はぁ、ひとまずは大丈夫かしら』


手早く床に転がるセイバーを回収し、軽く腕を振る。鞘はなく刃の部分には布が巻いてあったのだろう、包帯のような長い布も転がっていた。それを巻き付け刃を覆う。


『(セイバーも回収した事だし、さっさと帰ろうかしら)』


ふぅ、と一つ息を吐き室内を改めて観察する。ここが建物のどの辺りで何処に行けば外に出られるのか、を調べたかったのだが、あいにくこの部屋にはコンピュータの類いは見当たらない。

ヒタヒタと足音をたて、あの子が近づいて来る。手に持っていたナイフは床に転がっていた。


「・・・ぼくは、あなたがいい」
『なに?』
「―――うん、」
『??・・・・・・っ?!!』


訳が分からずただ見つめていると、バチィっと突然視界がスパークした。そして激しい頭痛と目眩に襲われる。


『(この感じ、あの時と同じ・・・!!能力が回復してる?!)
・・・・・・あの子、何だったの・・・?』


壁にもたれ掛かり、上がっていた心拍が治まるのを待つ。手を握っては開いて、を何度も繰り返し視線をふと前へ向ける。さっきの子の姿は何処にも無かった。


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