長編
□不安定なやり取り
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【15:不安定なやり取り】
『おかえり、二人とも』
一足先に戦場から離れていた私は、二人の気配を感じ、声をかけた。
「む・・・、見つからないようにこっそり入ってきたのに」
『不意打ちでもするつもりだったの?』
笑って言い放ったその言葉に、静まり返る。冗談めかした会話、本当なのか嘘なのかは分からない。兎にも角にも、今戦の戦利品の行方が気になるので、尋ねる。
『冗談よ。で、遺産はどうなったの?』
「此処にある」
『流石っ♪』
聞くまでもなかったらかしら。見るからに機嫌が良いものね。でも、やっとこれで遺産があっちとこっちに一つずつになったわけだ。
ダアトの書、ねえ…。今回もまた予言書だったのね。嫌われているようだけど、ちゃんと解読出来るのかしら。言うこと聞かないからって鎖付けてるし…。
『邪魔者は退散するわね?後で連絡ちょうだい』
二人がイチャイチャしだしたので退散退散っと。扉から出ていき、外に出た所でふと立ち止まる。
『何処に行こうかしら…?』
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特に行くところも無かったので、久しぶりの我が
家に帰ってきた。独り暮らしにしては些か広すぎるが、お金は十分すぎるくらい持っているので問題ない。
帰りに買ってきた食材をテーブルに並べ、恐る恐る冷蔵庫を開ける。そこには、思っていたような腐敗臭漂う魔窟は存在しておらず、ただのガランとした白い空間が空けられていた。
ふう、と一つ息を吐き安堵する。再度中を確認し、調味料が扉の棚に残されているのを確認する。
『……簡単にスープとパスタでいいか』
コトン
出来上がった料理をテーブルへと運び、席に着く。そしてズルズルとパスタをすする。
私の持つこの烙印は、聖戦絡みのものだろう。いや、絶対絡んでいるに違いないわ。刻まれたタイミングがそう物語っているじゃない。皐がダアトの書を解読したら、この烙印の記述が無かったか聞いてみようかしら。…素直に話すとは思えないけれど。
ヴー、ヴー、
音の発信源は私のケータイ。マナーモードにしたままだったので、バイブレータでケータイが震えている。手に取り画面を見ると、“メール一件”の表示。
そして、送り主とメール内容を見て笑みを浮かべた。
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