<短編−弐−>

□受け継がれてゆく心
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ちはやが、年上で村一番の暴れん坊と評判で、近所の子たちが『ガキ大将』と呼んでいる子供と、相撲をしてきたみたい。

理由は、親としては悲しいかな、『化けガキ』と呼ばれて馬鹿にされたことにあるらしい。当初は、そんなことを言われても気にしないフリをしていたみたいだけど、ちはやの傍にいたましろまでもガキ大将君が馬鹿にしたために、とうとう、ちはやが怒っちゃったみたい。

それで、ガキ大将君のどっちが強いか思い知らせてやる、ということで相撲をとってきたみたいだけど、ガキ大将くんは身体は大きいし、力も強い。対してちはやは、妖の血が流れているからそれを考慮したとしても、村の子の中では身体が小さいグループに入る。

やはりと言うべきかしら。何度も投げ飛ばされて、土俵を摸した地面に何度も叩きつけられたみたい。
でも、相撲を見物していた子供たちに聞いた話だと、どれだけ投げ飛ばされようと、どれだけ怪我しようとガキ大将くんに、何度も何度も立ち向かって行ったらしの。


『絶対に諦めないからなっ!!ましろに謝れっ!!』


そう叫びながら…。

ちはやに根負けしたガキ大将君が謝るまでそれは続いたみたいで、家に帰って泣き叫びながらあたしに抱き着いてきたましろの後ろには、泥に汚れて、傷だらけのちはやが立っていたの。

勿論、ビックリしたわ。

すり潰した薬草を傷に塗りながら、何があったのと、理由を尋ねたけど、その時は「何でもないよ」と笑ってばかりで話してはくれなかった。けれど、ましろの話とちはやの様子が気になって家に来てくれた子たちに話を聞いて事情は分かった。

あたしは、フイッと顔を背けて、肩を震わせるちはやを抱きしめた。母親としては誉めてやりたかった。


「よく頑張ったわね。あたしはちはやを誇りに思うわ」
「母う、え…」


あたしは、ふえ…と泣きつづけるちはやの頭をずっと撫でつづけた。そして、その時に思ったの。やっぱり犬夜叉の子だわ、ってね。夫も何度打たれても、あたしを背に庇いながら、敵に立ち向かっていったもの。この子の、ましろを背にして相撲をとる姿は、きっと犬夜叉と変わらないわね。それにまた、喧嘩じゃなくて相手を傷付けにくい相撲ってところも。


その晩、仕事から帰った犬夜叉に、お茶を飲みながら事の詳細を話したところ、夫は「そうか」と言って立ち上がり、既に眠っていたちはやの、頬に出来た傷のまわりを指で撫でながら、一言言った。


「頑張ったな。それでこそ俺達の息子だ」


犬夜叉の言葉。あたしも、そう思うの。
犬夜叉の何ものにも屈しない、負けない心が、確かに息子に受け継がれていることが、本当に嬉しかった。



Fin




後書き

ネタ元は『紅蓮の蓬莱島』です♪♪DVDを見ていて、つと「きっと、ちび犬兄弟も犬夜叉の姿を見ているから、少なからず影響を受けているのでは…?」と思い至ってプロットを立てて、書いてみました(^O^)

龍羅と半妖の村で闘っている最中、打ちのめされ、投げ飛ばされ、岩壁に叩きつけられても屈しない犬夜叉の姿は、蓬莱島のこどもたちに大きな影響を与えました。勿論、犬夜叉ファンである私も。そして、きっと皆さんもそうでないかな、と思います(^-^)

ちはやや、さくにも犬夜叉の心、受け継いでいてもらいたいものです(笑)


ここまでお読み下さり、ありがとうございました♪

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