<短編−弐−>

□きっと かなわない
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かごめさま。

かごめさまは、異國(とつくに)から参られた崇高な巫女さまだ。近隣諸国では『時渡りの巫女さま』と呼ばれ、その御名を知らぬ者など一人もおらぬではないかというぐらいに有名な、我等が村の、何より大切な御方。御姿は観音さまの如く神々しく美しいが、微笑むれば花のように愛らしく笑う、優しいひととなりだ。所帯を持たぬ男たちは、皆、かごめさまを妻にしたいと願った。

しかし、時を渡られたかごめさまがお選びになさったのは、犬夜叉だった。皆、首を傾げた。中には、憤る者もいた。何故あの犬夜叉なのだ。こともあろうに、何故半妖なのだ、と。

思い切って、かごめさまに聞いてみた。



「かごめさま。何故、かごめさまは犬夜叉をお選びになられたのです。ヤツは半妖なのですよ。人間と相容れられるとは思えません。」



おれの言葉に、かごめさまは、薬草を摘む手を止めて、きょとんとされておられた。しかし、その後、にこりとお笑いになられて…。



「今、あなたの言ったことが最大の理由です。」

「は?」



おれの言ったことが理由だと言われても、おれが聞きたかったことは、半妖を選んだ理由である。それでは意味が、分かりかねますと言うと、かごめさまは頬をほんのりと朱く染められて、また微笑まれた。



「今、あなたが『何故、犬夜叉なのか。』と聞きました。それが理由なの。あたしは、゛犬夜叉″だから、あの人の所にお嫁に行ったんです。人間だとか半妖だとか、あたしの中でそれは関係のないことなんです。どちらの犬夜叉でも、あたしは夫に嫁ぎました。それに、半妖だから人間だから相容れないということは無いと思うわ。犬夜叉の存在は、その証明よ。」

「………。」



かごめさまの答えを聞いた瞬間、敵わないなと思った。犬夜叉だから、嫁いだのだとはっきりと言い切ったかごめさまの御心を動かせる男は、この村に留まらず、日ノ本全土を探しても居ないだろう。ただ、一人を除いては……。


その時、背後から特徴的な長い影が伸びた。風に合わせて影の一部が揺れる。



「かごめ。」

「あ、犬夜叉。お帰りなさい。」

「おう。なあ、もう帰られるか?迎えに来たんだがよ。」

「うん。もう終わったから帰れるわ。ありがとう、犬夜叉。」



刹那、かごめさまはおれたちには見せたことのないような微笑みを犬夜叉にお見せになられた。まだ恋を知ったばかりのような初々しさの残る、微笑み。犬夜叉を見る瞳はキラキラと輝き、ほんに嬉しそうに話す。それは、恋する乙女そのもの。見せられた気分だった。



「では、夫が帰ってきましたから、あたしはこれで、失礼しますね。」

「…あ、はい。では、また明日…。」



犬夜叉の隣で、手を振るかごめさまに、頭を下げて、ふたりの後ろ姿を見送った。犬夜叉の手がかごめさまの肩を抱き寄せる。絵になるような光景だ。仲睦まじくふたり並んで帰る姿を見たくはなかったのだが、犬夜叉だけにしか見せない、かごめさまの美しさには目が離せなかった。


犬夜叉にしか見せない、かごめさまの姿、か……。


フッと自嘲するような笑いが零れた。完敗だった。


犬夜叉には一生敵わないだろう。

そして。

この想いも、きっともう叶わない。

どちらも、゛かなわない″のだ。




Fin


ザ、村人さん語り。村人さんがたから見た犬かごは、まさしくバカップルの見本なのでしょーなぁ〜(笑)

かなわない→『敵わない』と『叶わない』を掛け合わせてみました。でも、導入と本体が全く繋がっていませんね…(´Д`)
文章もなんだか、変だし…。

精進いたします…。





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