最終章

□第19話
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―――…
(エドside)


「…エド。」

「ん?」


読んでいた本から顔を上げる。
見つめてくる真菜の瞳に映る感情は何だか…悲しいのか、辛いのか、苦しいのか、よく分からなくて。

いや、もしかしたらすべてが含まれているのかもしれない。
声をかけようとして直前に発せられた真菜の言葉に、俺の身体は凍りつくことになった。





















「…別れて、ほしいねんけど。」

「……………は?」


は、何だよ。
急に、別れるとか、


「な…なんだよ、冗談…「…ちゃう。
別れて。」

「っなんで…!!」


別れなきゃいけないんだ、と言いたかったのに言えなかった。
さっきまで不安そうにしていた瞳に、冷たい光が宿っていたから。


「特に意味はないって。
あえて言うなら…飽きたから、ちゃう?」

「…でも、俺は…!!」

「ええかげんにしてよ。
もう、恋愛ごっこはお終い。
とっとと出て行ってくれます?
"エドワード・エルリックさん"。」

「………ッッ!!」


ああ、なんだ、コレ。

胸が苦しい。
こんな、一方的に言われて、俺にこれ以上どうしろって言うんだ。

今まで傍に居てくれたこいつに否定されれば、もう…


「…分かった……」


ごそ、と部屋の一角にまとめて置いてあった荷物に手を伸ばす。
その自分の荷物の少なさに、思わず泣きそうになった。

スルリと左手の薬指にはめていた指輪を外し、真菜の机の上にそっと置いた。
せめて、俺がここにいたという証を残したくて。


「…じゃあ、な。
…真菜と一緒にいれて、結構倖せだったよ。」

「――――ッ!!」


パタン、とドアをそっと閉めた。
怒る気力も、泣く気力も、突然すぎる出来事に湧いてこない。


「…さよなら。」


家の門を出た所で、そっと呟いた。

…きっともう、この家にただいまを言う日はこない。







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