第2章
□第13話
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―――…
(ロイSide)
「ただいま…」
実香が部屋に入るので、私もそれについて行く。
今日のアニメイトというのは、実に興味深いものだった。
なにやらフィギュアというものがあったり、私達のグッズがあったり。
…いや、アップルパイの方が興味深いというか、関心したな。
「アップルパイ、作れたのだな。」
「あぁ…まぁ、レシピ見てたし、真菜がほとんど作ってたけどね。」
「あの子、そういうの作るの好きだし。」と実香は言いながらダルそうにベッドに腰掛けた。
仕草の1つ1つは雑なのに、なぜかそれが気になる。
じぃ、と見てしまっていたら、寝転んでいた実香とバチンと思い切り目があった。
思わず体と心が跳ねる。
「何?」
「い、いや、別に…」
近づいてくる実香を見ながら、何とか激しく動く心臓を収めようと努める。
しかし、それは次の実香の言葉で無駄になった。
「もしかして、見とれてた?」
「!!!///」
にやりと意地悪心を隠さずに笑い、それだけを言ってまたベッドに戻ってしまった。
バクバクと鳴る心臓を押さえつけながら、からかわれたのか、と頭の隅の方で思った。
クソッ……
私は、何をしているんだ。
こんな子供に惑わされて。
…この気持ちには薄々気づいている。
けれど、私はそれを認めたくはない。
いわゆる、"大人のプライド"というところだ。
真菜や綾乃からすればくだらないとか言うかもしれないし、エルリック兄弟も同様の反応をするだろう。
だが、彼等に夢やプライドがあるように、私にもあるのだ。
それが、方向性のまったく違うものであれ。
ようやく落ち着いてきてふと実香を見ると、パソコンに集中していた。
…アレをしていない時って、あるのか…?υ
数日間みていたけれど、実香はアレをやっているかご飯を食べているか寝ているかしかないような気がするんだが…?υ
時折笑ったり、泣きそうになっていたり。
「…そんなに、」
無意識のうちに言葉が漏れていた。
「そんなに面白いのか?」
「え?
ああうん、まあね。
…一緒に見てみる?」
と言って、耳に付けているものを片方渡された。
「こう…付ければ良いのか?」
「うん。」
「そういえば、あっちの世界ではまだヘッドホンなんだっけ。」と実香は小さく呟いた。
耳に付けた小さな機械から、なにやら人の声が聞こえた。
「なんだコレは?」
「ニュースのアニメーション版だと思え。」
「…なんとなく分かった。」
ここに来る前からもニュースは見た事があったから、少しは想像がついた。
時々クスクスと笑い声が聞こえ、何だかくすぐったい。
しばらく見ていると、急に横で実香が腕を伸ばした。
「そろそろ遅いし、寝るかー…」
「そうだな。」
実香はベッドに、私は床に敷いてある布団の中に入る。
「おやすみ。」
「おやすみー…」
ふあぁ、と欠伸を頭上から聞きながら、ゆっくり目を閉じたー…
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