最終章
□第20話
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―――…
(エドSide)
ガチャッ!!
「ただいま!
とりあえずエドは風呂入ってこい!!」
ぐいぐいと綾乃に押されて無理矢理風呂場に入れられた。
ここに来る途中で涙は収まったけれど、身体は雨に濡れて冷えきっている。
暖かいシャワーを浴びると、心の奥から温まるような感じがした。
根元はまだ冷えているけれど、それでも綾乃とアルに少し助けられたような気がした。
「上がったぞー。」
「ん。
よっし、ほな…聞かせてくれるやんな?」
「…おう。」
「俺にも良く分かんねーんだけどな。」と自嘲気味に笑ってから事のあらましを話し始めた。
話しながら泣きそうになったり頭が真っ白になって覚えていないこともあって大変だったけど、大体の事情は話せたと思う。
すると…
「あンっの、アホ…」
「えっ…っと、綾乃、大丈夫?υ」
オーラが…黒いオーラが……!!
ゴゴゴ、と地響きでも聞こえてきそうな綾乃のオーラに、俺とアルは思わず後ずさる。
少しして落ち着いてきたのか、綾乃は寂しそうにふぅ、とため息を吐いた。
「…エド……」
「お、おう?υ」
「…若の事、嫌わんといたってな…?」
「…心配すんな、それはねェよ。」
真菜が俺を嫌いになったとしてもたぶん、俺はあいつを嫌いになんかなれない。
もしこのまま、ふとした瞬間にこの世界から消えることになったとしても、だ。
「俺、あいつに会えて幸せだったからな。」
ふ、と小さく笑う。
俺と真菜をいつまでも繋げているような錯覚を作りだしていた指輪は、もうこの手の中にはないけれど、でも、それでも。
「短かったけど、この気持ちは俺の宝だから。」
「…エド……」
「…兄さん、ちょっと成長したね?」
「誰が今まで成長してなかったってぇ……?」
「このやろう!」とアルに飛び込むと、そのおかげで部屋の中の空気が少し和らいだ気がした。
「…あ、そうだ。
1コ忘れてた。
ってことで、帰る場所無ェから泊めてくれ。」
「いいよ別に。」
「いいのかよ!?」
「うん、もうママに了承は取ってあるし。
ただし、うちは働かざるもの食うべからずやから。」
「おう…」
それはまあ、そうだろうと思いながら、心に重たい石を乗せたまま、新しい生活が始まった。
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