第1章

□第6話
1ページ/6ページ



―――…
(真菜Side)


「兄さん…!!!」


あたし達の目の前に居たのは、紛れも無く"人間"のアルだった。
しかし痩せこけておらず、普通の体型に普通の服を着ている。

…おかしい。
もし、この世界に来るなら鎧姿のアルのはずじゃないの……?


「兄さん…やっと会えた……!!」

「アル、何でお前そのすがt「アルーッッ!!


エドの言葉を遮り、今ちゃんがアルの前に踊り出た。


「え、うわぁっっ!!?」


そのまま抱き着いた今ちゃんとアルは、もつれるようにして石のタイルの上に転がった。
目を回しかけているアルの首に後ろから腕を巻き付け、今ちゃんは爛々と目を光らせながら言った。


「これ、うちがもらっても良い!!?

「「おちつけ。」」


あたしと実香のツッコミをスルーし、今ちゃんはアルの写真をバシャバシャと撮りまくっていた。



―――…


「ねー、まだ頭痛い…」

「うっさい自重しない今ちゃんが悪い。」


目を回しているアルを撮りつづける今ちゃんに、あたしがゲンコツをかましたのは数十分前。
取り合えず2人の体についた埃を払い、自分の部屋に引き返した。

…がしかし、流石にあたしの部屋に6人も入るには狭く、今の時間は誰も使っていない寝室に移動した。


「ん〜…どうしよ。
とりあえず、あたし達の自己紹介からかね?」

「実香です。」

「綾乃でっす

「で、あたしは真菜な。」

「あ、えと、アルフォンス・エルリックです…」


丁寧にお辞儀までするアルに少しだけ拍子抜けしてしまう。

エドとロイは声をかけてこず、あたし達の様子を見ているだけだ。

何から説明しようかと迷っていると、アルの方が先に口を開いた。


「…あの、ここは…?」

「あぁ…
ここは日本。
兵庫県にあるあたしの家だよ。」

「にほん…ひょうごけん……?」

「日本は国名で、兵庫県はそっちの世界で言う地方の事だよ。
リゼンブールとか、ユースウェルとか。」


あぁ、なるほどと言うように頷きかけたアルは、ふと眉を潜めた。


「あの、そっちの世界でってどういう…」

「そのまんまやで。
…ここの世界に、アメストリス国は無い。」

「えっ……!!?」


アルはチラリとエドの方に視線を向け、否定しない兄を見て顔が青ざめていく。
すると、ぽつりと小さな声で呟いた。


「僕のせいだ…僕が……」

「…?
アル、お前のせいってどういうことだ?」


エドに問い掛けられ、ビクッと肩が大きく跳ねた。
アルの顔は真っ青になり、視線はキョロキョロと一点に留まらない。

少しして、決心をしたようにアルは全員を見回した。


「…実は、僕の意識が無くなった時、真理に会ったんだ。」

「は!?
真理に会った!!?」


アルは頷き、真理と会った時の話をしはじめた…









.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ