虹入り水晶

□虹の空、銀の海 第一部
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〜プロローグ〜




もう一度そこから見つめてほしい

あなたを取り戻せるその場所から
静かな静かなさざなみ

悲しみ疲れた心をいやすの




「おばあ様がその歌唄うなんて久しぶりだよね」
「…そうですね」
「なにかあったの?」
「何故そう思うの?」
「おばあ様が歌う時はたいてい何かあったか何かあるかの二択」
「あら」


寒さを乗り越えた新芽が姿を見せ始めるが、
庭の柳の木は春の冷たい風に震えている。



――――
――


「はい、ということで前回受けてもらったテストの結果…全員が合格です」

「おっしゃー!!」
「やったね!」
「ふう…」
「あ〜緊張した」
「よかった〜」

テストの結果をまとめた紙を本人達に配りながら、彼らのテストを採点したホワイトも合格を喜ぶ生徒のようだ。

「みんなちゃんと勉強してたみたいで安心したよ」
「えへへ〜」
「あたりまえだよセンセ!だってこのテストに合格しなくちゃ今年のリーグは出ちゃダメなんでしょ?」
「いや…それ以前にこれが君たちの卒業テストだからね?」

目標と目的が逆転している。
現金ではあるがらしい動機に笑うも、ごほんと子供たちの注目を集める。

「リーグは夏に行われます。まだ半年近くもあるからそれまでポケモンのコンディションに注意すること。あと、今年から各地方のジムバッジを8つ集めると無条件でリーグ本戦に出場できるそうなので挑戦したい人は親御さんに旅の許可を貰ってから旅に出ること」

三年に一度のポケモンリーグが開幕される。
マサラ塾の五人の子供たち、カイト、フレア、ムツキ、メノウ、セナは今年のポケモンリーグに挑戦するのだ。
本人たちの強い希望もあったがたった一人の強者を決める大会に子供たちを出しても大丈夫だろうかと心配する親たちを納得させるものとして、卒業テストに合格できれば出場すると決めたのだ。

「でもジムリーダーってすっごく強い人なんでしょ?」
「でも先生があたし達の頃にほとんどのバッジ集めることが出来たんだよね?わたしたちもやれば…」
「挑戦する前に、旅自体が難しいよ」
「でもでも…」
「はーい。話し合いもいいけど先生の話もちゃんと聞いてね」

ぱんぱんと慣れた音で注目を集める。

「一番近いのはトキワの森を抜けたニビジムです。バッジを集めなくても挑戦するだけでも勉強になるからオススメするわ。塾は今日で終わるけどリーグ前に集合場所の連絡するわね。詳しいことはこれに書いてあるから後でちゃんと見ること」

“これ”と言ってリーグ開催の日にちやジムがある街やジムリーダーが使用するポケモンのタイプが書かれた冊子を配る。

「質問はない?……うん、じゃあ先生は暫くマサラに居ないから聞きたいことがあったらポケギアに電話をしてね」
「え…センセーいないの?」
「どこいくんだよ!」

先生となってからずっとマサラに身を置いていたホワイトと暫く会えなくなるのかと生徒たちが不安そうな顔をする。

「先生も君たちの勉強が終わったら他に教える生徒がいないから暇になっちゃってね。オーキド博士から依頼を受けたのよ」
「だれだよオーキドって!」
「町のはずれに住んでる研究者のおじいさんだよ」
「あ、すっごくポケモンのことに詳しいおじいちゃんだよね?」
「じゃあポケモンのこと聞いたら教えてくれるかな?」
「ぼくのポケモンが強くなる方法も教えてくれるかな?」
「はいはーい。もうすぐ先生の話が終わるから最後まで聞いてね」

すぐに話に夢中になる生徒たちだが注意すれば素早い動きで身を正す。

「オーキド博士は先生と一緒にジョウト地方に行くからいません。でも代わりにナナミさんって言う博士の助手をするお姉さんがいるからその人に教えてもらうといいわよ。あとは町長もいるからポケモンのことをもっと知りたかったら迷わず大人に頼りなさい。以上!質問がある人は?」
「…」
「いませーん!」
「はいじゃあ終わり。今日までみんなよくがんばったわね。リーグまでどれくらい強くなるか楽しみにしてるからがんばってね…号令」
「きりーつ。れー」
『ありがとうございましたぁ!』
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