虹入り水晶

□虹の空、銀の海 第一部
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女の成長という喜びを胸にマサラに戻ったホワイトは嬉々として祖母に報告し、やる気に満ちてジョウトに行く準備を整える。

「ああ、ホワイト。グレイが春休みの期間にマサラに戻ると連絡が来のだけど、それまでに戻って来れますか?」
「グレイが?」

ホワイトの母の兄であるリュウの息子、つまり従弟にあたる一つ下のグレイは現在タマムシ大学に在学中だ。
カントー地方全体を巻き込んだ四天王の事件で大きく成長したグレイは将来を考えてると言ってタマムシ大学の編入試験を突破し猛勉強している。
タマムシ大学で教鞭をとるエリカの講義にも顔を出しているらしくなかなか優秀な生徒らしい。
はっきり言ってしまえばホワイトよりも頭がいい。

「う〜ん…博士のフィールドワークによるから分かんないなぁ」
「できるだけ帰ってこれるようにね」
「わかってます」

必要な物をまとめた荷物を肩にかけて「いってきます」と古くなった門をくぐる。
途中、掃き掃除をしていたゴーリキーの金襴にも同じ言葉を投げればにこりと笑顔が返ってくる。



―――――
――


「博士ー!」
「おお来たか」
「よっ、ホワイト」
「久しぶり」
「ブルーに…レッド!?」

一番の女友達であるブルーと前回のリーグ優勝者にして幼馴染のレッドが久方ぶりに顔を並べている。
ここにグリーンも姿を見せれば前リーグ上位四人が揃うが、早々都合よく揃わないのがこのメンツである。

「ブルーはともかく、レッドがいるなんて…どうかしたの?」
「故郷に帰るだけで驚かれる日が来るなんて…」
「お前さんが帰らない日を数えてみればよかろう」
「いやでも、ブルーも結構ふらふらしてるだろ?」
「ブルーは連絡もあるしよく帰ってくるもん」
「え」
「知らないのはレッドだけのようじゃな」

茶化す言葉に困った様子で頬をかく。
その何気ない仕草に子供っぽさが見えるが、しばらく会わないうちに目に見えて背が伸び、体つきも少したくましくなった。

「…」

その成長した姿に、無意識に手でレッドとの身長差を測ってしまう。
その涙ぐましい姿に口を出すのがブルーである。

「また差が開いてるわね」
「うるさいやい」

旅立ちの頃はかわりない背丈が、この数年でみるみる差を広げる。ひそやかに気にしているのをブルーが知らないはずはない。
じゃれあいの折を見て、レッドが久々に帰ってきた訳を話す。

「ポケモン協会でトキワジムジムリーダーの話が通ったんだ」
「…えっ!?」

トキワジム。カントーの8つのジムの一角である。
長い間ジムリーダーが姿を見せず、トキワジムの存在は時間が過ぎるごとに自然消滅した。
その他にもクチバ、ヤマブキ、セキチクと半数ものジムリーダーが姿を見せなかったが、昨年の事件のあとマチスとナツメは何事も無かったようにジムを再開。
それでも、トキワ、セキチクのふたつものジムリーダーがいない状況は協会の方でも問題になっており、マサキを通じてそのことを知ったレッドはジムリーダーを希望している旨をマサキを通して協会に報告していたのだ。

「じゃあレッドがジムリーダーになるの!?」
「試験に合格したら、な」
「レッドがジムリーダー!?」
「大丈夫かしら、レッドだもの」
「おまえらな〜」

始終大げさな驚愕を繰り返すホワイト、違うと信じたいが何か企んでいそうなブルーの女二人からは激励も祝いの言葉もない。

「ジムリーダーの試験を受けさせてもらえるだけでもすごいことじゃ。がんばるんじゃぞ!」
「博士だけですよ…」
「ま、まあ冗談は置いといて」

レッドのナイーブな気持ちを察したホワイトはからかうのを止める。
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