虹入り水晶

□虹の空、銀の海 第一部
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〜1話〜


「…はふぅ」
「ワゥン」

ジョウト地方の真夜中でも輝きを誇る、むしろ夜の方がキラキラしい大都市コガネシティ。
アンズに調べてもらったブルーの両親の足どりをたどって博士から休みをもらってきたはいいものの、その場所にいたであろう人物等はすでに別の場所に移ってしまった。
近隣の人達から聞き取れた情報では海外のどこかという曖昧かつ途方もない情報。

「…ブルーに言わなくてよかった」

本当ならば、両親の情報が見つかったことを言いたくてしょうがなかったが、結果を知った後では感情で先走らなくてよかったと自分を納得させる。

「…研究所に戻ろうか」
「ワフ」
「ありがとうフォン、戻って。…よし、リュウイ!」
「ガウ!」
「研究所までひとっ飛びお願い!」
「ガウーゥ!」

この件はまた考えよう。
ひとまず区切りがついたので今は博士の手伝いに精を出すことでモヤッとした気持ちを塗り替えたい。


―――――
―――


ポケモン学の権威と、知らない人の方が少ない(マサラ人は身近過ぎて逆に忘れがちだ)オーキド博士についてきてまずはじめに思ったことは「儲かっているんだなぁ」といった俗物なことだ。
第二研究所などを構えられる博士にどこからそんなお金が出るんだとふざけて聞いてみたらあらびっくり。

「おばあさま?…」
「なんじゃ聞いとらんかったのか」

研究費の一部はハーツ家が保障しているらしく、おまけに図鑑の部品はシルフカンパニー社から出ているらしい。

「お前さんが持っとるカメラと同じタイプの部品じゃ。耐熱耐冷とあらゆる環境に対応できる特別製じゃ」

ポケモンの生態を写真に残すために三年前に叔父からプレゼントされた頑丈カメラ(←価値を知らないネーミングである)を持参しているが意外なつながりだ。

「今年開通するリニアモーターも同じ素材じゃぞ」
「あ、それは知ってます!おじさまに誘われてリニア見に行った時説明してくれました」

中でも外でも攻撃されても大丈夫な頑丈な造りだと自慢気だった。外は分かるが中から攻撃ってあるのだろうか。
リニアという狭い空間でポケモン勝負をしようという常識はずれはまずいないだろうに。

「じゃあその新しい図鑑も前のと同じ?」
「なにを言うとる!前と全然違うじゃろ」
「うん。軽くなったし画質が上がりましたよね」
「誰かさんがここぞとばかりに文句を言うからな」
「はは、誰だろうね」

新品と言わんばかりにツヤを見せる新しい三つの図鑑が並んでいる。
ジョウト地方のポケモンのために容量も増え、新しい機能付きだと博士も鼻高々な出来映えの新図鑑だ。

「それじゃあこの図鑑誰に渡すの?レッドは試験に向けて忙しいしグリーンも今はちょっと…ブルーもなぁ」
「んー…本来ならお前さんに預けてポケモンの調査を頼みたい所なんじゃが」
「私はたまに実家に帰るように言われてるし、家の手伝いしなくちゃいけないから…」

グレイの春休みには帰ってくるよう言われたが研究の手伝いが忙しく結局帰れなかった。
その時期も過ぎ去り、まだ気温は低いがカレンダーはもうすぐくる夏をカウントしている。

「ハクには昔から勝てん」

ぽりぽりと白髪をかく。
新しい図鑑を作ったはいいもののそれを渡す人物が今はいない。みんな良くも悪くも一歩大人になって、いつでも大丈夫という自由な時間が少し減ったのだ。
今考えれば、図鑑を埋める旅というのが一番自由な時間だったんだな。

「…捕まえるだけなら私たちじゃなくてもいいんじゃないですか?」
「なに?」
「博士のネームバリューなら“ポケモンの捕獲が得意な人大募集!”って呼び掛けたら自信のある人はすぐ見つかると思いますよ」
「そんな茶店のアルバイトじゃあるまいに」
「かのオーキド博士の研究にご協力くださいってすれば博士を知るポケモントレーナーはこぞって集まりますよ」
「うーむ……」

この世界にはたくさんのトレーナーがいる。
レッドみたいにバトルが得意な人もいればグリーンみたいに育てるのが上手な人もいる。私は………なんだろ。
まあ得意不得意があるなら一人くらいはポケモンにボールを当てるのが得意って言う人はいる…といいなあ。
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