虹入り水晶

□虹の空、銀の海 第一部
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「じゃがなあ…わしはそういう見出しのページを作るのは苦手じゃ」
「図鑑作ったり小難しい図式打ちこめるのに募集のページが今さら作れないなんて言わないでください。…じゃあ困った時のマサキ頼み」

言うが早い、さっそくポケギアで登録しているマサキの番号にかければすぐ出てきた。

「おーい」
『なんや』
「博士からマサキに頼みたいことがあるんだけどさぁ」
『博士が?今そこにおるか?』
「いるいる。変わるね」

ポケギアをオーキドに渡して頼みごとの内容を告げる。
すると『そんなら任せてください!』とはきはきした返事が返ってきた。

マサキに「ポケモン全種類捕獲できる自信がある人募集」の方を任せしばらく待つことにした。
ふと、なんとなしにカレンダーを見たら翌日の日付の所に赤字で文字がつづられている。

「……あ、博士。明日十時にラジオのスペシャル収録が入ってますね」
「ん?…おおそうだったそうだった」
「あっぶないなぁ、忘れないでください。じゃあいつもより早めに出ないと」

最近博士はラジオでポケモン口座を開いている。
自分の研究したことや知ってて損はない豆知識などを全国放送であるコガネのラジオ塔で披露している。
もういいお年だと言うのに研究に放送に忙しいお爺ちゃんである。

「じゃあ博士、今日は研究に夢中になってないでちゃんと寝てくださいよ。寝坊されたら困ります」
「安心せい」
「安心できないから言ってるんでしょ。私もお年寄りの尻叩きたくないんですから」
「むっワシはまだまだ若者には負けんぞ!」
「そうですね。ムキになってる所は若者と変わらないですね」
「…ほんっとにお前さんは似てほしくない所ばかりハクに似たな」
「弟にも言われました」
「いや、グレイにも言えることじゃ」



―――――
―――


「わーー!!」
「いってらっしゃーい」

オドシシに跨ったオーキドの姿がどんどん小さくなっていく。
案の定、ちゃんと忠告していたと言うのにホワイトが寝た後も研究に没頭し、眠った瞬間さえ覚えていないオーキドに、ある程度予測できていたのでいつもより早めに起きたホワイトがあきれて叩き起こした。
これがオーキドの孫娘のナナミならばもっとやさしくおこしてくれるだろうが、忠告を無視した報いのつもりだ。

「…ふう、さて今日はどうしよう」

起きたてで垂らしていた長い髪をみつあみに結う。
基本ホワイトはオーキドのフィールドワークの手伝いや資料の整理などを手伝っている。こう見えてもマメに資料を整理しているので今さら急ぐ必要もなく時間をもてあましている。

「ん〜、まあゆっくりしてようかな」

やる気なさげな言葉である。

「……ん?」

ふと鳥肌が立つ寒気を感じて辺りをキョロキョロと見回す。

「気のせい、かな?」

念のため入口に鍵をかけてとりあえず朝食を用意しよう。最近育ち盛りなのかおかわりしてもしばらく経てばすぐおなかが減る。
博士には急ぎでおにぎりを持たせたが自分の分はまだだ。
博士の手伝いというより炊事係ではないかと自分に突っ込みたい。


「…っ!!」


“なにか”が研究所に入ってきた。


起きたてで窓も開けておらず、玄関も今しがた締めたばかりで物音も無く“なにか”が侵入してきたのだ。
これが野生のポケモンならばむしろ窓を割るなり音が出るが逆であるならそれは人為的な何か。

「…カグヤ!」

第六感が騒いでいる。
どこにいるか分からないが、研究所で一番大切なモノはオーキドの研究成果。そしてその研究の種が集まる研究室になりふり構わづ突き走る。
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