雪の妖精

□第二章
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コトブキシティを東に進みクロガネシティに続く森の中を進もあいにくの雨で立ち往生している。
洞窟の中で過ごすこと約1日半、そろそろ動きたい…。

「と言ってもすごい雨だもんね」

風はないがバケツをひっくり返したようなどしゃ降りの雨。
服を乾かすため脱いでいまは袖なしに短パンと寒いことこの上ない。体の半分を寝袋に入れて寝そべる白夜の温かい懐にお邪魔して約1日半。

「グルルル」
「やっぱり蒼牙も退屈だよね〜」
「ヒコヒコッ!」
「火猿もか〜」

血の気盛んな蒼牙と火猿。白夜はクールに座っているが内心では暇で暇でしょうがないだろう。
だが毎日体を鍛え特訓しているのだから休憩と思えばいいのだ。
そう考え直して白夜の豊かな白い毛並みをプラッシングしたり蒼牙の固い鱗を磨いたり、集中的に育てて酷使している火炎の爪を丁寧に整えて暇を紛らわす。


  …、……


一瞬だけ激しい雨の音がその音にかき消された。
反射的に洞窟の外を見るが誰もいない。
しかし[何か]に引き寄せられるように私は外に出た。私の後ろを心配性の白夜がついてきた。


―――――
―――


水を吸った服が肌に張り付き鬱陶しく感じる。
私は目指す場所が分からないまま出てきたが[何か]を感じる方に歩き、時に走る。

歩いていると一本の木の根元で淡い光が不安定に光っている。
ちょうど死角になっていて相手の様子が分からない。

「ねえ、そこにいる君。どうしたの?」

できるだけ怯えさせないように声をかけるが返事がない。
ゆっくり近づいて死角になってたところをのぞきこんだらそこには傷だらけのラルトスが木の幹に背中を預けてぐったりと横たわっていた。
何故、だとかどうして、と考えるよりも先に痛ましい怪我を手当てしなければとラルトスを抱き上げるとラルトスは傷だらけで力が出ないのか、抱き上げてもぴくりとも動かない。だらんと垂れ下がるままの腕が心を余計に焦らす。
白夜に乗り急いでかつできるだけ揺らさないように洞窟に戻った。



蒼牙も火猿も傷だらけのラルトスを連れてきたときはびっくりしてたが火猿は焚火の火をつけて応急処置の手伝いをしてくれて、白夜は雨の中木の実を探しに行ってくれた。
蒼牙は新たに集めてきた濡れた薪を地道に乾かしてくれている。

それにしても手当てをしてて気がついたが怪我のほとんどが打撲の痕だった。
しかも拳の痕と大きさを考えるとラルトスを殴ったのは人だ。
時間がたっても薄れることのない痕を見る限り殴ったのは男。それも私より少し上ぐらいとみた。

「…ラ、ルゥ…」
「…気がついた?」

ラルトスは私を認識するなりカタカタと怯える。仕方ないといえば仕方がない反応だ。
しかし、ラルトスの角が光だしだんだんと落ち着いてきた。そういえばラルトスは人の気持ちに敏感なポケモンだ。私に敵意がないとわかったんだろう。
私はラルトスの目線の高さまで屈んだ。

「ラルトス、嫌なこと聞くかもしれないけど何があったの?」
「ラッ…ルゥ…!」
「……もしかして、暴力受けて捨てられた?」
「!…(コクン)」
「そっか…」

世の中にはいろんなトレーナーがいてその人のやり方がある。一見シンジのやり方はポケモンを虐待しているように見えるがシンジのポケモンはシンジを確かに信頼している。そして結果にもつながっている。
ゲットしたポケモンをシンジ曰く使えなかったらすぐに逃がす。それもありだと思う。下手に連れまわされて知らないところで逃がされても困るだろうし。
でも、このトレーナーの在り方は絶対間違っている。自分のポケモンを動けなくなるまで殴るトレーナーがいると考えるだけで…。

「ラルゥ…」
「ん?……あ、ごめん」

知らない間に爪が皮膚に食い込むほど強く握っていた。ラルトスが止めてくれなかったら血が出てたよ…。

「ねえラルトス。もし行くところが無かったら一緒に旅しない?」
「ラル?」
「私、シンオウリーグ挑戦とグランドフェスティバルに出場するために旅をしてるの。
…っと言ってもまだリボンもバッジもゲットしてないんだけどね…」

どうかなと言うとラルトスは周りにいるみんなを見渡した。みんなは歓迎するぞとばかりに笑っている。ラルトスは私に視線を戻して丁寧にお辞儀をした。
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