雪の妖精

□第三章
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〚コトブキ大会優勝はシオンさん!〛


故郷であるシンオウ地方最初のコンテスト大会。
見栄えのある炎タイプの火猿と技のキレが自慢の心のコンテストへの適性も見えて挑んだ大会は胸を張れる一つ目のリボンとして結果を残した。

「ありがとう火猿、心。これがあなたたちの実力よ」
「ヒコヒコ!」
「ラール」




  ソノオタウン


この町は花香る町と言われているけど、昔からこんなにきれいな街ではなかったの。
昔はひどく荒れ果てた丘だったそうで、それだとさびしいからってみんながお花や木を植えたんだけどなぜか全然育たなかった。
ところがある日、一人の女性が丘の上に立って「ありがとう」の気持ちを伝えたら突然花が咲き乱れ木々に実が鈴なりに……

「…不思議なお話でしょう?」
「とても優しいお話ですね…いいお話を聞かせていただいてありがとうございます」
「お礼なんていいのよ。このソノオタウンに初めて訪れた人に街の伝説を知ってもらうのも、ちょっとした年寄の楽しみなんだから」

花の香りをまとわせた優しげな婦人はソノオタウンの花がよく似合う笑顔をうかべながら言う。

「ところで、そのチラシを持ってるってことはポフィン教室に参加するの?」
「はい、ほかの地方のお菓子を作るのに慣れてしまって、しばらくポフィンを作ってないんです。どうせ作るならおいしいものを作りたいですし」
「それはいいことだわ。がんばってね」
「はい!」



ポフィン教室が開れているのはソノオタウンの中でもとびきり綺麗な花とおいしそうな木の実が実っている果樹園のある家だ。
その果樹園を管理しているツボミという女性がポフィン教室を開ている。
あいにく生徒はシオン一人だったものの時間が差し迫ったので材料の木の実を摘みに出る。

「あ、ツボミさん。玄関に誰かいますよ」
「チコチコ!」

シオンと並んで木の実を摘んでいた果樹園のチコリータも人の気配に反応した。

「…ヒカリ?」
「あ、シオン!クロガネジムぶり」

玄関にいたのはヒカリたちだった。

「ポフィン教室に参加の方ですか?」
「あ、はい」
「ごめんなさいね。お待たせしちゃって」

すると、謝罪するツボミさんの手を取りバックにきらきらしたオーラを漂わせたタケシさんが言う。

「お待たせなんてとんでもない。あなたのように美しい方のためならたとえ永遠の時をささげようともこのタケシ、悔いはありません!」
「そ、それはどうも…」

明らかに引いてるツボミさん。
今まで頼りになるお兄さんといった印象を持っていたシオンはそんなタケシのナンパなセリフやらなんやらに驚いて固まる。

「タ、タケシさん?」
「タケシは綺麗なお姉さんを見るとこうなるのよ」

タケシの習性に慣れてきたヒカリがシオンに説明をする。

「お名前を…」
「ツ、ツボミです」
「ツボミさん、まさに花香る街にふさわしい可憐なお名前……今度自分と!お花畑でデートを…!!」

タケシのボールからグレッグルが出てきて自身のトレーナーを"どくづき"で沈めた。

「チィ〜っ」
「大丈夫よチコリータ。グレッグルも無暗にどくづきなんてしないわ」

苦手な毒タイプの技を目の前で披露されてシオンの足元に隠れたチコリータを宥めるがしばらくは離れる気はないようだ。

「あ、チコリータ!」
「わぁ!かわいいー」
「チコチコ」

シオンの足元で頭の大きな葉っぱを隠しきれていないチコリータに気づいたサトシはパッと顔を明るくさせてチコリータの傍で腰を落とす。ヒカリも可愛らしいチコリータに興味を引かれて膝を折ると、自分に好意を示す二人に気を許したチコリータが蔓を伸ばして二人に握手をした。

「このチコリータはおとなしいんだな」
「チコリータはおとなしい子が多いけど…もしかしてサトシ、親しいチコリータがいるの?」
「ああ。昔一緒に旅をしてたんだ。元気のいい奴でベイリーフに進化して、今はオーキド博士のところで預かってもらってるんだ」

懐かしいなぁとつぶやくサトシに相槌を打っているとタケシがグレッグルに引きずられながらツボミの案内で奥に移動しているのに気づき、慌てて三人で後を追う。
生徒数も増えていよいよホフィン作りが始まった。
砕いた木の実を鍋で溶かしかき混ぜてるとツボミが「ヒカリちゃんもシオンちゃんもずいぶん慣れてるみたいね」と褒める。

「私は旅をする前から料理をよく作ってました」
「あたしも、ママのお手伝いで作ってましたから」
「お母さんのお手伝い!えらいわあ〜」
「ハイハイハーイ!自分もいつもお母さんのお手伝い…っていうかリアルにお母さんやってきましたー!時にはお父さんも!」

にぎやかになったポフィン教室は順調に進み、ツボミの指導の元、参加者全員のポフィンが完成した。

「ポフィンできましたー!」
「オレのもできましたー!」
「はい、それじゃあ試食タイムにしましょうね」

それぞれの手持ちからポケモンを出して自分が作ったのを食べてもらう。
私の手持ちの子は見た限りではポフィンを食べるのは初めてのようで、ポロックを食べたことのある蒼牙と白夜は簡単に説明したらおいしそうに食べてくれた。うん、上出来の様子。

「ラルっ!?ラルラル!」
「ヒコヒコ!」

珍しく…いや、初めて聞く心の怒った声色にそっちをを向くと心が火猿に殴りかかってる。身軽な火猿は軽々かわし、それがさらに心の怒りを増長させてる。
どうやら喧嘩の原因は火猿が心の分のポフィンをかすめ取ったとされる。回りをよく見ればヒカリのポケモン達もヒカリから逃げるように部屋中を走り回ってる。あ、ポッチャマが火猿と心の喧嘩に巻き込まれた。
サトシのポケモン達はサトシのポフィンに目もくれずツボミのポフィンだけを食べてる。

シオンのメンバーは白夜が心にポフィンを分け与えたことで落ち着いた。
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