雪の妖精

□第六章
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特に寄り道することなく真っすぐヨスガシティに到着したシオンは当たり前だがジムに挑戦しました。
まあ…結果だけを言えば勝ちました。(一度負けてまた再挑戦したのはここだけの話)



「アナタは吸収するのがとても速いデース! ワタシ、ホントーにビックリしまーした!」
『いえ、白夜の力量が高かったんですよ。のみ込みが速いのはむしろビャク…』
「オウ! ワタシには分かりますよ〜? さっきの試合、アナタは一度負けた時の流れをやり方を変えて再現してました。ワタシ、それに気づいていましたよ。アナタの策を崩したのをアナタは冷静に対応して勝利!アナタは間違えなく強いデース!」
『ふふ、ありがとうございますメリッサさん』

ヨスガジム勝利の証、レリックバッジをバッジケースに収めた。これでバッジは3つ。
流石にいつまでも単純な作戦で勝てるほど甘くはないってことを痛感させられた。



ポケモンセンターでメンバーの回復の合間にメリッサさんがヨスガの町を案内してくれた。
派手なドレスとメイクはいくら都会でも浮く者は浮く。
しかし羨ましいことに派手なドレスもメイクもメリッサさんにはよく似合っている。
くるくる踊る姿は本当に楽しげで見ている方も楽しくなる

『(トップコーディネーターってこういう人がなるものなんだろうね)』



ヨスガの町のブティックで着せ替え人形にされた私はあまりいい思いはしなかったものの勢いに押されていろいろ着ることとなった。

『なんか昔に戻った気分…』

昔、と言っても三年ほど前のことだ。
今よりも髪が長かった小さなころ、よく母親が作った服をあれこれ着せられた。

別に嫌ではなかった。

色とりどりの服が綺麗で、可愛くて、長い髪も母親に結ってもらうのが好きでむしろ好んでた…と思う。

母はテレビでもてはやされるほどのデザイナーで、服を作るのが大好きだ。
そして私は母が作った服を着る。
言うなれば着せ替え人形のようなそれが私と母とのコミュニケーションだ、少ない時間で唯一の。
でも、それ以外のコミュニケーションが分からなくて、それ以外に母とのつながりが分からなくて、難しく考えすぎていつの間にか母を避けるようになった。

自分はただの着せ替え人形なの?って

ばかな考えだと今では思うが、その避けてた時期があったから今もわだかまりが胸にある。

「晴れない顔デスねー。疲れさせてしまいましたか?」
『そう、ですね。大きな町で見るものがたくさんあって気疲れしたんだと思います』
「そのようですね! ヨスガの町はモノがたくさん、見るモノたくさんで見所がたくさんありマース! 今日はゆっくり休むといいね」
『そうさせてもらいます』
「…シオンさん、ワタシ旅に出ようと思います」

テンポのいいしゃべり方から一転、普通のリズムで話すメリッサさん。
静かに話す口調は真剣で、でも気まずい空気にならないように顔は笑っている。

『旅に、ですか?』
「ええ、ワタシ、常々思ってました。トレーナーはみんな、ジムに挑戦して大半の人は負けて帰っていきます」

まさにこの前のわたしですね。

「でも、負けたトレーナーは強くなってまた挑戦にきます。今日のアナタのように」
『……』
「あなたたちを見てワタシももっと強くなりたいって思いましタ。
再挑戦してくるトレーナーたちのためにもワタシはもっと強くなりたいんデース!」
『そのためにトレーナー修行ですか?』
「ええ! それにアナタと同じでワタシもポケモンのタマゴを持ってマス。その子にいろんなものを見せてやりですね。ジムは申し訳ないデスけどしばらく休業ね」

パチンとウインクするメリッサさん。
申し訳ないと言いつつも旅に出ることへの期待と高揚感が伝わってくる。
その気持ちは、私も持っているもので。

『いいんじゃないですか?旅でしか分からないこともあるんですから!…ってこれは受け売りですけど』
「オウ! ありがとうシオンさん!」



翌日、ヨスガのジムリーダーにしてトップコーディネーターのメリッサさんは旅に出た。
ジムの扉に張り付けられている張り紙には暫く旅に出ますという紙が張り出されている。

メリッサの行動の速さにシオンは驚きを通り越して笑いさえ出てくる。

「おや、ジムリーダーはお留守ですか」
『そうみたいですね』

張り出された紙を見て小さく笑っていると後ろから心地の良いテノールの声がする。

コロトックを連れた男性だ。

緑の服装は繊細な模様があり、暖かそうな格好だが、パーティーでもないのにその格好は不自然だ。似合ってるけど。
黒髪の長髪がよく映える綺麗な顔立ちをした男性がハープを名残惜しげにつま弾く。
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