雪の妖精

□第七章
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タッグバトル大会初日が終了し、参加者は各々ポケモンセンターで休み、取っている部屋に戻るなりフロアで休憩するなりする。だが、トレーナーならその前に必ず行うことがある。


「「「ジョーイさん、お願いします!」」」
「はい、お預かりします」

そう、一回戦を勝ち抜いた者も敗退した者もポケモンを回復してもらうためにポケモンセンターに一度預ける。
しかし今日はタッグバトル大会が執り行われ地元の者はもちろん、旅をしているトレーナーも加わり受付の机には溢れんばかりのモンスターボール。
ジョーイさんの苦労が目に見えてる。

「ジョーイさん! お手伝いしましょう!」
「あなたは?」

しかし女性、しかも綺麗な人が相手ならば外野を気にせずに飛びだせる人がいる。タケシだ。

「自分はタケシ! 大会の出場者ですがその実態はトップブリーダーを目指し日夜精進を続けるナイスガイ(キラーン)。ポケモンのケアには自信があります!!」
「まあ、それではぜひお願いしますわ!」

どこから取り出したのか、白衣を着用しやる気満々でいる。手を合わせて喜ぶジョーイさんの笑顔こそがタケシの心のケアになったことだろう。



「つまりポケモンのポテンシャルはトレーナーとの関係性に寄って大きく変化するんです。技や能力に思わぬパワーが加わるのがその証と言えますね」
「うーん、難しいことはよく分かんないけど…要はポケモンとトレーナーの仲が良くなるほどポケモンは強くなるのね!」

フロアのソファーで会ったばかりとは思えないほど会話を弾ませるヒカリとコウヘイ。

「ええ、そしてそれはコンテストでも同じです。大事なのはポケモンを愛すると言うことですよ」

眼鏡の曇りを拭きながら言うコウヘイの言葉にヒカリは隣に居るポッチャマと目が合い、少し照れた風に笑う。

「て、照れるわね…そうだ! サトシにも教えてあげよ!」

「……どちらにしても彼らはぼくたちの敵ではありませんがね」

思いたったら即行動に移し動くヒカリを特に気にせず拭き終わった眼鏡を見ながらコウヘイは呟く。



『力試し?』
「そ。やっぱり調査ばかりしてるとさバトルの勘がにぶっちゃうんだよ。この前もタテトプス保護の時に密猟者相手にうまく立ち回りできなくて悔しい思いをしたんだ」

変わってこちらもフロアのソファーに腰を据えてペア同士の親交、もとい幼馴染同士の会話をする。
コウキの話しにジュースを飲みながら話し半分に聞き流すシオン。適当な対応は幼馴染に対する気易い愛嬌だ。

「ああ、いたいた。シオンコウキ!少しいいか?」
『タケシさん』
「どうかしましたか?」

ジョーイさんの手伝いに行っていたタケシは羽織っている白衣を揺らしながら走ってくる。

「大会参加のポケモン以外に急患が入ってジョーイさんの手が回らないんだ。二人ともポケモンの手当を手伝ってくれないか?」
『そういうことならお手伝いします』
「あ、出来ますけどシオンほどじゃないんで薬で済むポケモンだけにしてください」

笑顔で了承するペアは早速治療室に向かう。
その数分後、傷だらけで気絶しているヒコザルを抱えたサトシがポケモンセンターへ駆けこんだ。


―――――
―――


治療ラッシュが過ぎ、一息入れようとしたタケシ、シオン、コウキの元に急患ですと言ってサトシがヒコザルを連れこみ、飲んでいた紅茶やジュースを置き急いで治療にあたる三人。前に来た重症ポケモンのオペはまだ終わっていないのでジョーイさんはまだ不在だ。

「怪我自体はすぐ治るものが多いな…」
『ええ、でも古傷がたくさん…これじゃあ特訓中にまた開きますよ』
「はい、新しいガーゼ」
「ありがとう。そこに置いといてもらえるか?」

傷の手当てに集中するタケシ、骨や他に異常が無いかくまなく見るシオン、その二人の作業をスムースにできるようサポートするコウキの連係プレーでヒコザルの治療は手際よく行われた。

「タケシ!」
「ヒコザルは!?」

治療室からでるとヒコザルを連れてきたヒカリとサトシがホノカと待っていた。

「明日一日寝てれば回復するだろう」
「そっか、よかったぁ…」
「ヒコザル、ゆっくり休めよ」
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