雪の妖精

□第一章
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「蒼牙(ソウガ)!白夜(ビャクヤ)!バトルスタート!!」

スピアーの群れの中心に光とともに現われたのは、蒼く勇ましい体躯のガブリアスと、純白の毛並みの清麗とした雰囲気を漂わせたアブソルだ。

「蒼牙、白夜。ヒコザルを助けるのが優先だよ!」

蒼牙と白夜は全く無駄のない動きでスピアーと戦ってくれた。
バトル大好きな蒼牙はシオンの指示がなくても躊躇した様子もなくその外見に見合う勇ましい戦いぶりを見せた。
白夜は蒼牙の性格を十分に理解しているからだろう大半のスピアーを蒼牙に任せ、シオンがヒコザルの元へ駆けつけやすいように道を作ってくれた。

「ヒコザルしっかり!」
「ヒコォ…」

くたりと弱ったヒコザルを抱き上げるとお伴として付き添っている白夜が身をかがめた。それに合意してとび乗ればスピアーの集団から抜けるように白夜が大きく飛びあがる。

「……よし、怪我の処置も早めに出来たからもう大丈夫でしょ」
「グルルル…」
「…」

スピアーの毒にかかっていたヒコザルにモモンの実を与え擦り傷にスプレーをかけて処置をする。
その間、蒼牙も白夜もヒコザルの具合が心配なのか、周りをウロウロと落ち着きがない。
といってもウロウロしてるのは主に蒼牙で白夜はどこから見つけてきたのか、オボンの実を持ってきてれた。蒼牙もうろつくのならこれくらいしなさいと意地悪を言えば先ほどまでの勇ましさはどうしたと突っ込みたくなるほどの落ち込みを見せた。

「………ヒコ?」
「あ、起きた」

気を失うのも一時的なものだと思っていたシオンだがその予想よりも早く目が覚めた。

「ヒコザル、具合はどう?オボンの実食べれる?」
「…ヒコッ、ヒコヒコ!」

そう鳴くと切り分けたオボンの実をどんどん口に入れていった。
心配無用なほどに、ものすごく元気だ。

その後ヒコザルは食べるだけ食べた後、呆れるほどのスピードでまたどこかに行ってしまった。



「まったく。手間をかけさせて…」

再び捕まえたヒコザルはたまたま発見したムクホークに逃げないように連れて行ってもらった。
そして、今度はポッチャマを探そうとしていたのだが――

「ヒカリ…どうしてここにいるの!?」
「えーっとぉ…」
「ポッチャマ!」

シンジ湖にヒカリがポッチャマと一緒にいた。森の中は危険だから待っているようにと言った注意を無視してくれたことに怒るよりも先に怪我がないかと心配した。

「だ、だいじょうぶだいじょうぶ。ポッチャマもいたし…ね」
「ポチャマ!」

ヒカリに話を振られたポッチャマはえへんと胸を張る。自分がいたから大丈夫だという意志表示だろう。

「で、なんで森に?私森は危ないって言ったはずなんだけどな」
「あ、う〜…」

シオンはできるだけおだやかに聞いたつもりだったが、逆にそのおだやかさがヒカリには怖かったようで一瞬言葉に詰まったが、事の次第を話す。

ヒカリも始めこそ森の前で待っていたがポッチャマの叫び声が聞こえていてもたってもいられなくなったヒカリは森に入り、アリアドスの巣に捕えられていたポッチャマを助けた。

…と。

「ん〜…仕方ないと言えば仕方ないけど。…よし、一発ガツンと怒っちゃおう」
「へ?」

こほんとわざとらしく間を置くと

透明な声が湖の時を止めた。


  キュウウウゥゥ


「…いまのは」
「…なに?」

湖の中心に波紋が広がった。
その波紋の中心から不可視の何かが出てきた。
その何かはシオンとヒカリに目線を向けているように見えた。

そしてその不可視の何かは空気に溶け込むようにその存在を消した。


「今のって…ポケモン?」
「ポチャァ…」

言いようもない空気がその場をつつんだ。

「……戻ろうか。あの存在のこともおじいちゃんなら分かるかもしれないし」
「うん…」



ナナカマド曰く、シンジ湖には以前から伝説のポケモンがいるという言い伝えがあるらしい。
シオンとヒカリが会ったのも、もしかしたらその伝説のポケモンかもしれないというのがナナカマドの意見だ。

「さてヒカリ君、トラブルがあったが今日は君の旅立ちの日」

ヒカリはポケモン図鑑の説明とモンスターボールの説明を軽く受けた。
ふとシオンは、自分の旅立ちの日を思い出した。

シオンの時もポケモンを貰う日にトラブルが起こって最終的にフカマルをパートナーとして貰った。

『私もあの時トラブルが無かったら…蒼牙じゃない別のポケモンと旅をしていたんだろうね』

ね、と蒼牙のボールに声をかける。

「では、シンオウの新人トレーナー用のポケモンを選びたまえ」

改めて炎タイプのヒコザル、水タイプのポッチャマ、草タイプのナエトルの順に紹介された。
ヒコザルはらしいといえばらしい元気良さを、ポッチャマは何の意図があるのかは知らないが腰に手を当てて偉そうに、ナエトルは特に自分をアピールすることはないがやる気の無さが逆に目立つ要素だろう。

「どれにするかね」
「もう決めてます。ポッチャマ!」
「ポチャ!」

ヒコザルがこけた。

「ポッチャマ。あたし達いいコンビになりそうよね」
「ポチャポチャ!」

ポケモンも人も最後に行きつくのは相性だ。
そしてはじめてのポケモン、パートナーというのはこれから先どんなに多くのポケモンを捕まえても変わることのない存在だ。

「おめでとうヒカリ!」
「ありがとうシオン!」

ヒカリの旅が始まった。



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ぐだぐだなテンポでスミマセン。
早くシンジを出したいので次もこんな感じだと思われます。
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