聖華の夜に

□思い出〜ソラと劉輝3〜
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劉輝「あ、あなたが、あたしの契約者」
ソラ「そうだよ。よろしくね、劉輝」
劉輝「よ、よろしく・・・・」
劉輝は差し出された手をそっと握った。自分の手を握られたソラはニコッと笑顔をみせた。
ソラ「ほら、帰ろう。もうすぐ暗くなっちゃうから、ね?」
劉輝「でも・・・・帰りたくないよ」
ソラ「お母さんにはオレが言うからさ。ね」
劉輝「・・・・うん、わかった」
劉輝はブランコから立ち上がって、そのままソラと一緒に公園をでていった。

茜色に染まる大きな空にはどこまでも広くて、世界を埋め尽くすように広大だった。
劉輝「・・・あたしね、この大空が好きなんだ」
狭くて、人通りの少ない小道をソラと劉輝のふたりだけであるく。
ソラ「・・・・空?」
劉輝「うん、空。お父さんが空大好きだったんだ」
茜色の空を見上げて劉輝は少し微笑んだ。
劉輝「お父さん、暇があればいつも空を眺めてた。それであたしに『空はいいよな、いつも嫌なことを忘れられる』っていうんだ。毎日そんなふうにいうお父さんの近くにいたから、あたしも空を好きになったのかも知れない」
空を見ると思い出す。あの頃のお父さんの笑顔を。
お母さんといるときよりもずっと嬉しそうな顔をしたお父さんの笑顔が、空をみるたびに頭に浮かぶ。
『劉輝、お前は空がすきか?』
あたしの顔をみて嬉しそうに聞くお父さんの顔が、ずっと頭から離れない。
ソラ「ふぅん。で、そのお父さんは家にいるのか?」
劉輝「ううん、こないだ車にひかれて死んじゃった」
ソラ「・・・・・・ごめん、嫌なこと聞いて」
劉輝「ううん。いいの。お父さんはずっとあたしの思い出にいるんだから。いなくなってなんかないから」
劉輝は自分の胸に手を当ててそういった。
そんな劉輝をみて、ソラは少しだけ微笑んだ。


つづく
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