【NL】短編

□Birth Day
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「アーサーさん、遅いっす」


ふぅとため息をひとつついて、南の空を見上げる。今日の空は心なしかとてつもなく綺麗な空だった。

それは、セーシェルの嬉しい心を表しているのかもしれない。


今日は、セーシェルの誕生日だ。


「一緒に祝ってくれるって言ったの、アーサーさんなのに…」


一番に祝ってくれると思ってた。だけど、一番はアルフレッド。丁度日付の変わった時にメールがやってきた。
二番目はフランシス。同じ時刻だ。


だけど、アーサーからメールが来たのはつい先ほど。それもおめでとうお一言もなく今日会いにいくとだけ。


しかも、待ち合わせ時間になってもやってこない。どこかの自称ヒーローではあるまいし、自称とはいえ紳士の彼が遅れるということは今まででもほとんどなかったのに。




「アーサーさんの馬鹿…」

「誰が馬鹿だって?」




ふと、聞こえた声に目を丸くして振り返ると、息を切らしたアーサーがそこにたっていた。その手には大きな薔薇の花束が抱えられている。




「ア、アーサーさん…っ」

「悪い…花束作ってたら遅くなった」

「もぉ、何かあったんじゃないかって心配したんすよ?」

「ああ、その…一番に祝えなかった、よな」

「残念ながらアルフレッドさんが最初っす」

「よりによって…二番か?!」

「二番はフランシスさん」



少し拗ねたように言うと、アーサーはやってしまったというように顔をゆがませてから頭を掻いた。
よほど一番に祝いたかったらしい。でも、それがセーシェルには嬉しくてつい、笑ってしまう。


「でも、三番目ですから」

「一番じゃねぇと意味ねぇだろ」

「いいですよ。そんなの…」

「…その、後れちまったけど、誕生日おめでとう、な」


紳士らしくもなく、がっかりしたような表情で薔薇の花束を差し出す。


「ありがとうっす、アーサーさん!…そんながっかりした顔しないでくださいよ」

「…べ、別に一番に祝いたかったとかじゃないんだからな!あいつらに負けたのが悔しいだけなんだからな!」

「そうなんすか?でも、私はアーサーさんは何番でも私の一番ですから!」

「…セーシェル…」

「だから、嬉しいっす!」



にこやかに笑ったセーシェルがまぶしいのか、太陽がまぶしいのか、アーサーは目を細める。




「…あれ?なんすか、これ」

「う、うわ!!!まて、それは待て!!まだ見るな!!俺が帰るまで、まだ見るな!!!」



アーサーが顔を真っ赤にして、そんなことを言うものだから、好奇心が上回って、薔薇の中に埋まっていた小箱を手に取った。




「ちょ、お前…っ!!」



アーサーが言った頃にはもう遅く、セーシェルはその箱を開けていた。




「…あ、」





きらりと輝くその指輪。アーサーは顔を真っ赤にして罰が悪そうに顔をそらす。




「その、お前さえよければ…だが…」

「う、嬉しいっす、アーサーさん!!」




薔薇の花束を抱えたまま、セーシェルはアーサーに飛びつく。


薔薇の花が、南の海に舞った。












あとがき
セーちゃん、おめでとぉおおお!!!///
英セーは初めてですが…さてさてちゃんとできてたかな…??;

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