魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜

□〜聖王と騎士〜
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和人は身を屈めて突きの下を潜って躱しリネオスの足を払い態勢を崩した。リネオスは態勢を崩しつつも突きを放って伸びていた右腕を振って和人に切り掛かる。
和人は横に大きく飛び退きそれを避け体勢を立て直し、リネオスも左腕で受け身をとって数回地面を転がり体勢を立て直した。


「冷静且つ柔軟な対応。ここまで私と戦えた者は数えるほどしかいない。誇っていいぞ」


「そりゃどうも。オレもタイマンでここまでやり合うのはじいさん以来だよ」


和人がそう言うとリネオスは何か面白かったのか、突然笑みを浮かべる。


「ふっ……ならば私も君の実力を認めて『本気』で相手をしよう」


それを聞いた和人は耳を疑ったが、次の瞬間にはリネオスが和人の懐に入ってカラドボルグを振るっていた。あまりに突然だったため、反射的に障壁を張って防いでしまう和人。しかしカラドボルグは障壁をすり抜け和人の左脇腹を切り付ける。が、少し食い込んだところでカラドボルグは動きを止める。
和人は左手でリネオスの右手首を押さえて強引に腕の振り抜きを止めていた。
そして空いていた右手でリネオスに風掌を放とうとするが、いち早く離脱するリネオス。


「一撃で決めに行ったがそううまくいかないか。なかなかしぶとい」


「アンタ、さっきまでが本気じゃなかったのか。見くびってたよ」


和人は脇腹を押さえつつリネオスへの警戒を怠ることなく構える。
リネオスはそんな和人を見て今度こそ決着を付けるべく動きだし一瞬で和人との間合いを詰めカラドボルグを振り下ろす。
カラドボルグは和人のいた場所を一刀両断するが、切ったのは和人が着ていたバリアジャケットだけで、和人はリネオスの後ろをとり背中に風掌を放つ。吹き飛ぶ瞬間リネオスは左手で和人の右肩に触れにやりと笑って吹き飛んだ後壁に背中を叩きつけて止まる。


「良い動きだった。だが君はもう私の攻撃を凌ぐことはできない」


和人はリネオスのその言葉の意味をすぐに理解することになる。

リネオスは先程と同じ速度で和人に接近し横凪ぎの一撃を繰り出す。
和人はそれを屈んで躱すが、カラドボルグは和人の動きに合わせて軌道を下に変えなおも和人に迫る。和人はリネオスの右手首を掴み攻撃を無理矢理止めるが、その力は圧倒的に強く和人は力だけで吹き飛んでしまった。


「……そうか。さっきアンタが吹き飛び際にオレの右肩に触れた時に能力が発動してたか」


「その通り。私の『会心の一撃』の二つ目の能力。『永久的な魔力追求及び動力源を破壊する一撃を放つことができる』。その発動条件は『同じ箇所に手の平で二度触ること』。君はもうカラドボルグからは逃げられない」


絶望的な状況に立たされた和人。しかしその瞳にはまだ光が宿っていた。










その頃ゆりかごの動力炉にたどり着き、見事破壊に成功したヴィータは、救援に来たはやてに抱かれてその役目を全うした。


「ヴィータはゆっくり休んでや。あとは私とリインがやったる」


「はやて、リイン。気を付けて行けよ」


ヴィータを局員に預けたはやては、リインとのユニゾンを維持したまま、聖王の謁見の間へと一直線に突き進んでいった。









その頃ヴィヴィオと戦っていたなのはは、クワットロの潜む居場所を見つけ、動いた。


「で、でもここは最深部。どうやってもここへ攻撃なんて……!」


「ブラスターV!」


「か、壁抜き!?そんな馬鹿げたことが……!!」


そこでクワットロは四年前の空港火災でのことを思い出す。


「ディバイィィィン……」


そこでレイジングハートにカートリッジが数発ロードされ、


「バスタァァァァァァ!!」


なのはの砲撃はゆりかご内の壁をいくつもブチ破りクワットロのいるフロアまで到達し一撃でクワットロを倒した。
それによりヴィヴィオが正気を取り戻したが、暴走する力を止められずに暴れだす。








そして和人とリネオスの戦いは終わりを迎えようとしていた。


リネオスはただ能力に任せてカラドボルグを振るい和人に切り掛かる。


「サイクロン。エアリアル・シューター&バインド・シューター」


和人は一度サイクロンに話し掛けるとサイクロンはそれに応え四つずつ魔法弾を作り和人の周りに展開する。
リネオスはそれに目も向けずに和人に迫りカラドボルグを振るうが、和人は浮いていたバインド・シューター二つをリネオスの両手首に当てる。それによりリネオスの攻撃は寸でで止まり、残り二つのバインド・シューターを足首に当て動きを封じた。


「君は詰めが甘いよ。両手両足を封じられようと君に攻撃は加えられる」


リネオスは言った後一つの魔法弾を作り放とうとする。


「甘いのはアンタの方だ。オレの魔力伝達速度は半端じゃないぞ」


言って和人はリネオスが魔法弾を作り終わる前に両腕に一瞬で魔力を溜め、作っていたエアリアル・シューター二つをリネオスの前に置きそれを両手で撃ち抜く。


「双風掌!!」


巻き起こった突風はリネオスを勢い良く吹き飛ばし壁に激突させる。
背中を強打しつつもリネオスはまだ意識を手放さずに魔法弾を放とうとするが、和人はすでに間合いを詰め、残った二つのエアリアル・シューターを撃ち抜く。


「双連風掌!! 」


壁と突風の挟み撃ちにあったリネオスはそれで力尽き意識を失った。
和人はそれを確認して大の字に倒れこむ。


「はあ……はあ……なんとか勝てた、かな」


息絶え絶えな和人はそこで力尽きたのか自分で起き上がれなくなっていた。
そこでリネオスの身体がむくりと起き立ち上がった。それに絶望感を覚えた和人だったが、リネオスは和人の右肩に左手で触れると言葉を掛けた。


「ありがとう、和人。おかげで身体を取り戻せたよ」


「お前……グレイルか?」


和人の問いに笑みを浮かべたグレイルは、落ちていたカラドボルグを拾い上げ言葉を掛ける。


「カラドボルグ。ボーゲンフォルム」


『Yes master』


そう答えたカラドボルグは両刃剣からその姿を本来の弓型へと変えた。



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