魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜
□〜聖王と騎士〜
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「カラドボルグ。オレが付けた『会心の一撃』、あとどれだけある?」
『残り756です』
「そうか。それじゃあやるぞ。カラドボルグ、フルドライブ!」
グレイルはそう言うと足元にベルカ式の魔法陣を展開しカラドボルグを天井に構える。
「おいグレイル。何するつもりだ?」
「これから残ったガジェットを全て破壊する。オレはスカリエッティに拉致されてから一度だけ自由に動くチャンスがあった。その時にアジトに収容されていたガジェット全てに二つ目の能力を付けた。今からその全てを撃ち抜く」
「それじゃあオレも……」
「安心しろ。さっきお前の右肩に三度目のタッチをしただろ?それが解除条件だ。だからお前に危害は及ばない」
「いや、そうだとしてもお前だってもうボロボロだろ!そんな状態でフルドライブなんて使ったら……」
「……死ぬかもしれないな。だがこれがオレにできる最良の選択なんだ。そしてオレなりのけじめだ。止めないでくれ。和人」
それを聞いた途端和人は残った力を振り絞って立ち上がろうとするが、グレイルはそれをバインドで封じる。
「くそっ、グレイル!バインドを解けこらぁ!」
必死にあがく和人だったが、グレイルはそれを受け入れずにことを進める。
「フルドライブ。メテオ・ストライク!」
グレイルの掛け声でカラドボルグはカートリッジをロードし、一気に五十本の矢を空に放つ。五十本の矢は、ゆりかごの天井をすり抜け空へと上がりそのあと地上へと流星のごとく降り注ぎ、ガジェット五十機を正確に撃ち抜いた。
「二発目行くぞ、カラドボルグ」
一発目ですでに限界に達していたグレイルだったが、その身体に鞭を打って無理矢理後続を放つ。
「くっそぉぉぉ!なのは!グレイルを止めろ!」
和人は同じ場所にいるなのはに大声で叫んだが、なのはは今ヴィヴィオの体内からレリックを取り出している最中で手が離せなかった。
和人はグレイルの姿を見ながら、いつかのリニスとアルザムの消えゆく姿を思い出していた。グレイルの姿がリニスとアルザムとダブって見えたのだ。
「くそぉ!動けよ、オレの身体!仲間が死ぬかもしれねえんだよ!動けぇぇぇ!」
和人は残りの力を絞りだして動こうとするが、もう指一つ動かないほどに限界だった。そうしてるうちにグレイルは次々にメテオ・ストライクを放ちその命を削っていった。
「カラドボルグ……あと……いくつ……だ?」
『残り56機です』
「そうか、ならこれで終わらせるぞ」
グレイルはもう魔力が空っぽのはずの身体から魔力を絞りだし、最後の一撃を放った。
「メテオ・ストライク!」
「ブレイク・シューーーート!!」
それとほぼ同じくしてなのはがヴィヴィオに埋め込まれたレリックを破壊した。
グレイルは最後の一撃を放ったあと、その場に力なく倒れてしまった。それにより和人を縛っていたバインドも解け、和人は地面を這いずりながらグレイルの傍により生死を確かめる。そしてグレイルの心臓からは確かに鼓動が聞こえていた。
そこにリインとユニゾンしたはやてが到着し、和人を見つけると真っ先に近寄って抱き起こす。
「和人君、大丈夫か?」
「オレは大丈夫だ。オレよりグレイルの方が重体だ。辛うじて生きてはいるが、早くしないと命に関わる」
和人はグレイルの状態をはやてに伝えると、すぐに脱出するためにクワットロを運び出し出ようとするが、ゆりかごが防衛機能を発動してしまい閉じ込められてしまう。
一人では動くことができない人が多くて、脱出経路も断たれた和人達はかなり焦っていた。
しばらくすると、何かのモーター音が近付いてきて、突然閉じられた壁が破壊され、そこからスバルとティアナが姿を現した。
「皆さん、助けに来ました」
二人の姿を見た和人は、教え子の前で情けない姿を見せたくないと意地を張り一人で脱出のため動きだす。グレイルとクワットロはティアナのバイクの後ろに乗せられ、なのははヴィヴィオを背負ったままスバルに背負われて移動し、はやてとリインは和人の横に並んで移動を開始した。
和人達は無事にゆりかごから脱出し、ヴァイスのヘリで急いで病院へ運ばれていった。
その後、到着した本局の艦隊によりゆりかごは破壊され、スカリエッティの野望は阻止された。
これが後にJS事件と呼ばれるようになったのは事件解決後しばらくしてからだった。
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