緋弾のアリア〜影の武偵〜

□Bullet64
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ジーサードに病院送りにされて、色々と状況が整理できてきたところで理子がここぞとばかりに迫ってきて、そこを見舞いに来たジャンヌに見られて誤解を解くために怪我を無視して走った結果。それ以降はもう指の1本も動かせなくなったオレがベッドで死んでいたら、ジャンヌを追って戻ってきた時にお菓子だけ残して消えていた理子が、ゾロゾロと入院していたバスカービルメンバーを引き連れて戻ってきて、何やら『物騒な物』まで持ち運んで作戦会議を始めてしまう。


「むぎぃい!! あの女、絶対! ぜぇえったい許さないんだから!」


ダンッダンッダンッ!
そんな地団駄を踏みながらに怒りを露にするのは、ピンクのワンピース衣装にシースルーの蝶の羽を増築した妖精のような格好のアリア。その怒り様はちょっと怖いくらいで、別の場所でやってくれというオレの発言を押し止めるほどだった。


「今回ばかりはアリアに賛同です! あンの小娘ェ……キンちゃんにあんなことしてェ……」


ギリギリギリィ!
アリアに続けて鬼の形相で歯ぎしりをしながら、暴走時にぶっ放すことで有名なM60マシンガンの調子を確かめながらに語るのは、患者用の服を着た白雪。こちらもアリアに負けず劣らずで内面から吹き出る負のオーラが部屋に満ちていくようで空気がどんどん重くなる。


「…………」


そんな2人を呆然と見てる、パッと見て無害そうな頭とおしりにモフモフの獣の耳と尻尾を増設したレキも、椅子に座りつつその傍らにいつものドラグノフではなくもっとゴツい狙撃銃を置いていて困る。聞けばバレットM82とかいう『対物』用の長距離狙撃銃らしいが、オレの横に鎮座されると威圧感がハンパない。


「キーくんもキーくんだよねぇ。敵と仲良くしちゃう上にチューまでするとかさー」


ポフポフポフポフ。
その3人と打って変わって余裕ありまくりの理子は、オレの足の上に腹を乗せてうつ伏せで寝そべりながら両足を交互に上下させて弄ばせていたが、その奥、オレの足下にドスンと置かれたヒルダ戦の時に使用した散弾銃がかなり怖い。


「あのさ、確か師団ではやつらとは敵対しないとかなんとか決まったんじゃなかったっけ?」


どいつもこいつも装備がおかしくなってるのにやんわりと触れるように寝ながらのオレが問いかけてみれば、各々が一旦その動きを止めて一斉にオレを見てくるが、なんとも言えないプレッシャーを浴びる。


「あたし達は襲撃されたの! これは明確な敵対行為よ!」


「そうです! これは報復! そしてキンちゃんを取り戻す決戦なの!」


「やられたらやり返すのが武偵です」


「それにさぁ、キョーやんだってやられたまんまで悔しくないのぉ?」


と、四者四様の返事が返ってきても、言ってることは一緒。もう完全に仕返しモードで、ジーサードにやられたオレも作戦に加われとでも言いたげな理子達に言葉を返しておく。


「悔しくないって言えば嘘になるがな……全体の決定で行動するのが普通なんだから、個々の私怨やらを持ち込んで話をこじらせたくないってのはある」


「なに小さくなってんのよ! 京夜はもっと影でコソコソ暗躍する意気込みでいなさいよ! だいたいやられたからってその様は情けないわ」


これで最小ダメージなんですけどね……
そんな意味の表情をしてはみるが、アリアはもうオレを見ていなくて、持ってきていたクレヨンケースみたいな箱から銃弾を丁寧に取り出して1つ1つ確認するようにじっくり見始めていた。あれは……武偵弾だな。チラッと見えた銃弾に刻まれた刻印がその証拠だが、どうやらあの箱の中身全部が武偵弾らしい。1発でも法外な価値のはずだが、貴族は金持ちってことか。よっぽどジーフォースに負けたのが悔しいらしいな。


「オレの怪我は情けないでいいけどよ、お前ら装備がほぼ武偵のものじゃなくなってないか? どれもこれも人に使ったら即死レベルだぞ。銃検だって……」


オレの意見などほとんど却下な一同に諦めつつも、これだけは言っておこうとこいつらの装備について突っ込んでみれば、バババッ! 聞くや否や理子、レキ、白雪がA4の紙をオレに見せてきてそこに書かれた内容を読めば、銃器検査登録制度。通称『銃検』の登録証で、今指摘した武器類が何故か登録許可されていた。ダメだろこれ……


「あややが登録代理申請サービス始めたから、早速頼んだらこのとーりですよ! くふっ」


なにしてくれちゃってんのあの方は!
きっとこの方々にこれらを持たせる危険性よりも儲けが上回ったんだろうなぁ。あの子意外と金の亡者だし。
余計なことをしてくれたあややには後日、物事はよく考えるように説教をしておくとして、今はこっちを片付けなくてはならない。


「……装備の件はちゃんと危険性がわかってるならこれ以上何も言わないでやる。だがオレはお前らの報復には協力しないぞ。もう止めはしないが、オレ個人はジーフォースとやらに恨みはないわけだし」


「京夜ならそう言うだろうってわかってたわよ。あたし達を止めもしないことも予想済み。その上で京夜を使うのよ。れっきとした『依頼』って形でね」


「その依頼を断ることくらいできる」


「あら、そんなことしたら……理子」


「うー、ラジャー!」


とにかくアリア達とは関わりたくないので、はっきりと今のうちに報復への不参加宣言をしたのだが、なんとも武偵らしくオレを使おうとしてきたのを断ろうとすれば、今まで足に乗っかっていた理子が見たくもない化粧品類を取り出して馬乗りに変更してグヘヘ、なんてクソ可愛くもない笑いでオレを見てくる。


「キョーやんさぁ、今の自分の状況ちゃんと理解しないと。じゃないとまた『京奈ちゃん』に逆戻りだよぉ? くふっ、くふふっ」


「…………お前ら全員嫌いになりそうだ……」


「なりそうで済む辺りはやっぱりキョーやん優しいよねぇ。さすがりこりんのコイビトだよ」


半ば脅迫に近い形で女装と依頼を天秤にかけられたオレは、もう2度と女装だけはしないと誓っていたこともあって、泣く泣く折れるようにアリア達からの依頼を受けることになってしまった。これもそれもどれもこれも暇潰しでボコってきたジーサードが全部悪い。次会ったら1発殴るだけじゃ済まないと思えよ。



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