緋弾のアリア〜影の武偵〜

□Bullet64
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「それで、オレは何をすればいいんだよ」


無事に理子と化粧品類を退けたオレは、依頼が諜報科らしいものであることを願いつつアリアに尋ねる。


「京夜にはあのジーフォースとかいう女を監視・調査してほしいのよ。とりあえずまずは3日くらいで退院して動いて。あたし達は京夜が集めた情報を元にここで強化合宿するから」


「あの、今ピクリとも動けないわたくしめに明明後日までに動けと? まぁ無茶苦茶言うのは今に始まったことじゃないし、これからお前ら。特に理子がオレに何もしてこないなら日常生活に問題ないくらいには回復できるだろうよ。しかしそのジーフォースってのにオレは会ったこともないんだが、聞く限りだと女で強いってことだけ。もう少し前情報はないか?」


「なんかー、キーくんの妹って言ってたけど、キーくんはそれ否定してるっぽいしよくわかんないかなぁ。得物はちょっと特殊な剣をいくつか。今は武装してなかったけど、こっちがあからさまに敵意を見せたらまた襲われかねないねぇ。さっきもすんごい剣幕で『家族以外が家にいていいわけない』ってキーくんの部屋は出禁みたいなこと言われたもん」


だからアリア達も報復の機会をうかがいたいわけか。それにしてもキンジの妹ねぇ……そんなこと話したことなかったよなあいつ。本人が否定してるってことは、隠し子的なやつなのか、それともそのジーフォースが自称してるだけなのか。どのみちそれもオレが調べなきゃいけないわけね。
その後オレの何もするなという注意に理子がブーブー文句を垂れてまた添い寝などをしようとするが、オレを有効に使いたいアリア達が抑止力となって引き摺るようにして部屋を出ていってくれた。しかしその直前に報復の方法で『ラ』から始まるあれな決闘方法が出てきてて冷や汗が流れる。ジーフォースもヤバイ方々を怒らせたもんだ。オレは怖くてできないよ。

それから翌日までオレのところへ来訪はなく、理子の夜這い的なものも防止できてようやく静かな時間を過ごしたわけだが、翌日の昼。体をゆっくりなら動かせる程度にまでなって、筋肉が固くならないようにストレッチをしていたら、またもゾロゾロと来客が押し寄せてきて苦笑。


「お前ら、学校はどうした」


「それより優先されることがあるのだ」


「これは師団として判断を誤るわけにはいかないからね」


ストレッチしながらに入ってきたうちの2人、ジャンヌとワトソンに対して放った質問に、2人して椅子を横に並べ座りながら答えてくるが、なんのことやらなオレは首を傾げる。


「ジーフォースがこの学舎に入ってきおったのじゃ」


その疑問に答えたのは、もう1人の来訪者である玉藻様。玉藻様は言いながらストレッチをするオレのベッドに乗っかり、あぐらをかいてオレと対面の位置に座る。


「そいつはまた。どこにどうやってだ?」


「年齢は14歳で、体裁としてはアメリカの武偵庁からの留学依頼だそうで、インターンとして1年C組に編入している。名前は遠山かなめで通っているらしい」


この事態に対して、オレのちょっと簡潔な質問にも聞きたいことはわかってると言いたげなジャンヌがわかりやすい説明をしてくれて、さすがリーダーとか感心したのも一瞬。おそらくはまだそのかなめが学校で授業を受けているであろう時間に来てここに密談をしに来たのだから、時間は有効に使わないといけないと思い話を切り出していく。


「転校してきたのはわかったが、それはキンジに一任したんじゃなかったか? オレ達が変に警戒しても仕方ないだろ」


「確かにそうだが、サルトビ、だからといってボク達が全てトオヤマに任せて安心できるかと言えば、そんなこともないだろ? 表向きではトオヤマに任せてはいるが、ボク達もボク達でやつらについて探りを入れるべきだとは思わないか?」


「幸い、ワトソンはデータによる諜報。猿飛は足での諜報に長けている。やつらが何かしらのアクションを起こす前にできる限り情報は集めるべきだ。現状で私達はやつらの素性すら掴んでいないのだからな」


うわぁ……これはあれだ。最初から決まってたことを報告してるだけだこいつら。しかもオレが拒否しないように賛同者の玉藻様を連れてきやがったな。やり方こそ違うがこいつらもアリア達と大差ない。きっとキンジもこんな感じでジーフォースの件を押し付けられたに違いない。


「オレはその遠山かなめちゃんから何を引き出せばいいんだ? 好きな食べ物か? 嫌いなものか?」


「できれば好みのものを優先してくれ。そこからジーフォース攻略の糸口が掴めるかもしれないからね。あとは定石だが彼女の弱み。これが一番厄介だが、君は優秀だという話はちらほら耳にしている。ボクの方はジーサードに少しばかり心当たりがあるから、そちらから調べてみる。確認は取れていないが、ジーフォースの近くには何人か仲間もいるようだから、くれぐれも動くのは慎重に頼むよ」


「必要とあらば私も手を貸す。だが事を荒立てるような素振りは決して見せるな。対立すればこちらは俄然不利。今は璃璃粒子も濃くて私や玉藻、星伽は超能力を使えんからな」


アリア達とは違って注意事項の多いジャンヌ達だが、そもそも調査の目的が違うわけだから仕方のないことか。アリア達はかなめを倒すための調査で、ジャンヌ達はかなめを引き入れるための調査。目的は違うのに結局やることは変わらないということに不思議な感覚はあるものの、拒否権はないと来ては同時にやってやるしかない。問題としてはアリア達からも調査依頼を受けていることを話すかだが……


「一応聞いとくが、アリア達はかなめに報復するようなことを話してたんだが、そっちは放置か?」


「そっちはこれからボクとジャンヌで話をしてみるつもりだが、4人ともプライドが高いのが困りものだ。そう簡単に動きはしないだろうけど、一応トオヤマが何か成果を上げるまでは押し止めておくよ」


「まず猿飛のはしっかり養生せい。体は資本じゃからの。じゃが明後日(みょうごにち)には動いてもらわねば初動として遅いでの。期待しておるぞ」


これはよくわからん。とりあえず話がこじれそうだから黙っておくか。それにオレの情報があろうがなかろうがアリア達は止まる気がしないし、話して依頼を破棄するよう言われたらオレが報復でやつらに女装させられる。それだけは嫌だ。
なのでアリア達の依頼とジャンヌ達師団からの依頼を同時にこなすことになったオレは、その後揃って部屋を出ていったジャンヌ達を見送ってから、明後日からの動き方について頭を捻り始めたのだった。



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