緋弾のアリア〜影の武偵〜

□Bullet66
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どこからしくなかった桜ちゃんの少し元気になった後ろ姿を見送ってからまっすぐに帰宅したオレは、明日が土曜日ということでかなめを1日泳がせてみることにしてその日は終了。体を休めるのも今は必要不可欠なので、可能な限りは休息に当てておきたいのだ。

そして翌日。朝から寮の屋上に登って日光浴しながらかなめの外出を見張っていると、陽も良い感じに登りきりそうな頃にかなめが1人で寮から出てきてどこかへと移動を開始。徒歩のようなのでかなめの姿がギリギリ見えなくなったタイミングで屋上から蛟を使って直接下まで降り尾行を始める。
道中、チラッと見えるかなめの顔にはゴツいサングラスのようなヴァイザーがつけられていて、耳の両側からはピョコンと猫耳のようなアンテナが伸び、時々ピコンピコン動くのが見えたが、情報では科学兵器を扱うとかあったのでその類いの物だと判断。さらに好物なのかミルクキャラメルらしき物をすでに2つほど口に放り込んでその都度、美味しそうに食べていた。
誰も見ていないにも関わらずどこか子供のような雰囲気を持つのと、アリア達を倒したという凶暴性がイメージとしていまいち一致しないかなめに分析もちょっと捗らないが、一昨日オレに見せた顔が本性だと自分に言い聞かせて尾行を続けていくと、かなめはとある建物の近くで立ち止まり物陰へと移動。その場所は第3女子寮。
こんなところで何をする気かと用心して離れた位置からクナイの光の反射を利用しそこに映るかなめを観察。するとかなめの制服の中からスルリと長方形の白い布が意思を持ったように出てきて空中へと浮く。あれも科学兵器の一種なのだろうが、どんな原理で動いているのかさっぱりわからん。
その白い布はヒラヒラと舞うようにかなめの元から離れると、女子寮の壁を登っていきどこかの部屋の窓を覗くようにしてその先端だけをちょこっとだけ出して止まった。あれに意味があるのなら、あの白い布にはカメラか何かの映像機能がある可能性がある。じゃなきゃあの行動の意味がわからん。

そんなかなめの謎行動をうかがうこと十数分。時刻にして正午になろうかという頃に、唐突に浮かせていた白い布がフワリと移動を開始し、すぐに女子寮の角へと到達。壁の向こう、出入り口方面へとその先端だけ少し出して向けるので、オレも目視で女子寮の出入り口へと目を向ける。
するとその出入り口から見たことのある人物が走って出てきて、そのままオレとかなめのいる逆方向へと行ってしまうと、その姿を確認した白い布はスルスルとかなめの元へと戻って制服の中へと隠れ、ヴァイザーも外したかなめはまた1つキャラメルを口に放り込んでどこかへと歩き出していった。

今女子寮から出てきたのは理子の元戦妹の島麒麟。今は1年の火野の戦妹だったか。その島が女子寮から出てきた時に遠目ではあったが『泣いていた』のを確認したが、その島を確認して去ったところを見るにかなめの目的が島だったことは明らか。泣いていたことへのリアクションもなかったことから、それもある程度予測済みの可能性があるな。
島との接点など皆目見当もつかないわけだが、島をピンポイントで監視していたのには何かありそうなので、そちらの方に探りを入れることにして一旦かなめは放置。というか考えてるうちに撒かれたのは内緒だ。走るのも体に悪いし。
そんな言い訳を自分にしつつ、走っていった島の方を捜索し始めるが、こっちも走っていったのでどのみち同じじゃなかろうか。そんなことを思いつつも接点のある理子経由で島とコンタクトを取ろうと携帯を取り出したところでいきなりその携帯に着信が入り、誰だよバカ野郎と思いながら相手を見て速攻で通話に応じる。


『今どこ?』


「第3女子寮の近く」


『……何? あなた覗き趣味でもあったの? 理子で満足できないなんて贅沢なご身分ね』


「いた場所が女子寮の近くだったくらいでオレを変態みたいに言うな。んで、ご用件は?」


『5分。第2女子寮まで来なさい』


挨拶もなし。用件すら言わずにくだらないことを挟んでそんな指示をして通話を切っていった夾竹桃に、文句を言えない自分の立場を呪いながら、一見数字が並んでるから近いように感じるが実際はちょっと距離のある第2女子寮へと走らされるのだった。結局走る羽目になる辺り、キンジの不幸スキルを彷彿とさせて嫌になるな。

それでおそらく5分以内に辿り着いた第2女子寮の前には、それを指示した夾竹桃がキセル片手に待ちわびていて、そこからさらに理子が普段使っている1011号室へと移動しそこにリビングのソファーに座ってようやく話が始まった。


「少々面倒なことになったわ」


「オレもちょっと面倒なことしてるんだが……」


「あなたの都合なんてどうでも良いのよ。要約するけど、さっきある子からメールで『ハメられた』って来てね。その原因が私にも少しだけありそうで後味悪いし、解決に協力しなさい」


「拒否権ないんだろオレには。具体的には何をすればいい?」


「聞き分けが良すぎて気持ち悪いわね。でもまぁ、従順なのは気分的に上々。メールをしてきたのは島麒麟。一昨日の夜に少し会ってあることを忠告したのだけど、その時に事故があってあの子と危ないツーショットになったのよ。その瞬間をあの女に撮られてたみたいで、それをさっきあの子の戦姉に送信されて仲違いさせられたみたい」


おっと。関係ないと思ったら意外にも繋がったな。呼び出された時はふざけんなと思ったが、これも普段のオレの行いの良さが……言ってて虚しいからやめとくか。
しかしこれで先ほどの流れを理解できた。かなめが最初に覗いていた窓はおそらく火野の部屋で、様子をうかがい島がやって来るタイミングでその危ないツーショットを送り喧嘩させた。


「どんな危ないツーショットかは聞かないでおくが、火野が島を突き放すくらいに衝撃映像だったとして、問題なのはあの2人を狙ったのがかなめだってことだろ? オレには目的が見えない」


「『本丸』が違うのよ。そこを落とすにはまず周りから。あれのやることは狡猾で残酷なものよ。気付いた時には孤立しているでしょうね」


周り? そう言われて夾竹桃の言う本丸とやらを考えてみると、ふと昨日、放課後に会った元気のない桜ちゃんの姿が浮かび、そことも不思議と結びつき本丸に辿り着いた。


「…………間宮あかり、か」



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